清塚信也 OFFICIAL BLOG: 2008年11月

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2008.11.24

降るべきじゃない雨

繋がるとき、繋がらないとき。
願いが叶うとき、願いが破れるとき。

ねえ、人生って本当に色んなタイミングがある。

今日は雨の一日。
それはタイミングとしてあまり嬉しくない雨だった。
今日の雨は、なんとなく、降ってはいけない時に降っているような感じがする。
降る予定がなかったのに降ってしまった雨…。

「僕は生まれた時代を間違えた。タイミングが悪かったよ」
と、諦めを含んだ複雑な微笑みを浮かべて僕に話した人がいた。
「もう、死にたいよ」ともその人は言った。
「夏にね、いくら温度を下げて冷たくしても『冬』にはならないでしょ?」
その人は中性的な話し方をする。
女性の強い心と男性の繊細な器を持っている。
その人が女性なのか男性なのかは、、、秘密。
「冬の寒さは冬だけのものなんだ。タイミングだよ。死も同じ。
夏に寒くしてもそれは冬ではなのと同じように、死は向こうから訪れないと死じゃない。
自分で設定した死はほんものじゃないと思うんだよ」

死は季節。

だから、死は僕らが勝手に設定できるものではない。
死はいつか訪れるし、皆に訪れるという所は平等だ。
金持ちも権力者も関係なく。
だけど、死は向こうからやってくるから死。
それは自由には選べない。
僕は中学生の時「いざという時は死があるさ」と言い聞かせて色々と頑張った記憶がある。
でも、それは間違えだったという事だ。
死ぬ権利というものは自由じゃない。
死から選ばれなくてはいけないんだ。
ミュージカル「エリザベート」のように。

僕は、あらゆる「タイミング」を自分で演出できたら、と思う。
でも、いつもそのせいで僕は苦しむ事になる。
それでも、最近、少しずつ少しずつ、
季節に逆らわないで生きようと思えるようになってきた。
今日の雨…。
なんだか少し今日の雨が好きになってきた。
冬の寒さを感じるために暖房はつけず、
雨が降っている事を確かめるために音楽もかけず、
今日は静かな夜を迎えようと思う。

2008.11.21

山口・2日目

山口での2日目は美しい晴れだった。
夜の冷たい雰囲気とはまったく違う景色がそこには広がっていて、
ホテルから観られる山々に囲まれた町並みは、穏やかで表情豊かだった。
僕は昨日到着した時の、寂しい、冷たい町を想像していたので、
カーテンを広げた時に一気に広がったこの光景にいささかの感動を覚えた。

僕はしばらく立ちつくして、色んな建物や色んな車を観察していた。
そして、何らかの縁で僕が将来ここで暮らす想像をして、
少し運命や人生の不思議さにパニックを起こしてしまった。
全ての出逢いに意味があるとしたら、僕がこの町に出会った意味は何だろう?
そんな事を考えながら、僕は今まで出逢った人、別れた人の事を思いだしてみた。
思い出してみると、出逢いも別れも、本当に様々な形があった。
運命的に出逢った人、劇的に出逢った人、すれ違って別れた人、成り行きで別れた人、、、

生きているのに、どうして別れなきゃいけないのだろう?

僕は「死」による強制的な別れを知っている。
それを知っていると、生きているのに別れるという事にとても強い反感を覚える。
それでも最近は「仕方がない」という言葉をやっと覚えてきた。
人は生まれた時に両手で水をすくう。
そして、死ぬまでなるべく水をこぼさないように生きる。
でも、絶対に、絶対に、水は手のどこかからするすると抜けていってしまうのだ。
一滴もこぼさないで生きるなんて、無理だ。
でもだからといって諦めて水をぶちまけてしまってはいけない。
最後まで、大切に、大切に、その水を守らなくてはいけない。
守ろうとするその姿勢が大切なのだ。
「こぼしたくない」
そう思う事が、大切なのだ。

あっという間に時間が経っていた。
いつから立ちつくしていただろうか。
僕は思い出した一つずつの思い出を愛しく思った。
その全てが自分が生んだ子のように感じた。
一つずつ思い出をかき集めて抱きしめたかった。
「失いたくない」
そう思った。
僕には失いたくない思い出が沢山あり、今こぼしたくない水もまだ沢山残っている。
これが生きるという事だと思う。
幸せなんだと思う。

初めて来た山口の町並みは、そんな僕の思いで立ちを優しく迎えてくれた。

2008.11.20

寂しい旅

今日僕は初めて山口宇部空港に降り立った。
羽田ほど大きくないし混んでもいないが、
エネルギーがぶつかり合っていて活気があるように感じた。
空港という所は決まってそうだ。
広さや人数などに関係なく、空気に動きがある。
そして、多くの出逢いや別れがあるからか、
何かそこには「切なさ」みたいなものも感じられる。
僕はそういう空港の雰囲気が大好きだ。

空港から新山口駅まではバスを使うと便利だと言われたので、
空港のインフォメーションのお姉さんの言うとおりにした。
新山口に着くと、JRで山口駅まで行く必要がある事に気付いたので、
僕は迷わず普通列車に乗り込んだ。
特急と普通とあったのだが、新山口から山口に行く普通列車は、とても風情があった。
こんな風に言うと怒られるかもしれないが、
なんというか、すごく「田舎」っぽかった。
僕は旅好きだ。
それもひとり旅。
ひとり旅を美しく演出してくれるのは、土地柄がしっかりと出ている風情だ。
僕は、2両しかない普通列車に乗り込み、列車の出発を立ちながら待った。

列車は比較的空いていたから座る事も出来たのだが、
僕は列車で座るのが好きではないのでひたすら立っていた。
しかし、2駅も行くと学生たちが溢れるかのように入ってきたので、
立っていて良かったと思った。
学生たちは修学旅行かのように車内で楽しそうにしていた。
僕はそれを見ていてなんだかとても幸せだった。
うるさいし、決してマナーがあるとは言えないのだが、
それでも若い人たちが元気にいる事が愛おしかった。

列車は30分もすると山口に着いた。
山口に着くと、もの凄い冷気が押し寄せた。
想像の範囲を明らかに超えていた寒さに、僕は少し滅入った。
でも、この「滅入り」が良いのだ。
これこそが旅の醍醐味だ。
不安、緊張、そういったストレスの親戚たちが旅の隠し味としてスパイスを利かせてくれる。
僕はタクシーの運転手にホテルの名を告げた。
すると運転手は「すぐそこだから歩いたら?」と言った。
そうか、すぐそこなら自分の足で歩きたい。

「すぐそこ」というのはどういう意味だろうか?
僕にとってのすぐそことは、1ブロックくらい先の事だ。
でも、もう信号2つ分歩いていて、5,6分は歩いた。
僕は1人で歩くときは割に速い速度で歩くので、もう結構な距離を歩いたと思う。
勿論、まだ5,6分の範囲なのだが、
これを「すぐそこ」と言えるかどうかは疑問だった。
タクシーに乗ってもいい距離じゃないか。
相変わらず冷たい風が僕の体にぶつかっては離れてゆく。
途中で古い(半分くらいは店の灯りが消えている)商店街を横切った。
結局ホテルは7分歩いたくらいの所にあった。
確かに、タクシーに乗るには…

人の感覚というのは分からない。
価値観も分からない。

僕は大好き、ある人は大嫌い。
僕は正義だと思う、ある人には極悪に感じる。
でも、僕が愛していて相手も愛してくれる場合だってある。
「人それぞれ」
この言葉が、とてもネガティブに感じる時もあれば、愛しく感じる時もある。
どちらにしろ、僕はそういった感覚をゆっくり感じて人生を過ごしたい。
その一つ一つを情報として自分の生命や魂に刻み込みたい。

僕は、とにかく、寂しい旅が大好きだ。

2008.11.12

僕の位置

瞳を閉じて、僕は自分が世界のどこにいるかを考えてみる。
いや、考えるんじゃない、感じてみる。
それから、永遠に暗い宇宙に浮かぶ真っ青な地球を想像する。
その後、太陽系を抜けて、何もない暗闇の冷たい世界を想像する。
そして、死よりも何もない無の世界に辿り着く。

僕は、何でもない。

それでも、僕の心臓は今日も動いていて、僕の血液は僕の体内を駆け回っている。
ラッシュ時の首都高速のようだ。
僕の血管が首都高速だとしたら、あの忌々しい三宅坂ジャンクションはどこだろう?
瞳を開けて、左手の中指の付け根あたりにある血管を撫でてみる。
そして、軽く押してみる。
血管を押すと、血管は自らの意志であるかのように元通りになる。

僕は、何でもない存在だけど、昨日も、今日も、ちゃんと生きた。
明日は、どうだろう?

こないだ、僕が小学生時代を過ごした「小手指(コテサシ)」という町に行ってきた。
昔は長く感じた道が短くなってたし、高いと感じていた壁が低かった。
でも、通学路だった道や何でもない道路を何気なく歩いてみると、昔のままだった。
そこにはまだ僕の人生があった。
しっかりと、僕の人生はその町で続いているようだった。

中学の時に僕はその町から去った。
もう、今となっては中学生の頃なんて大昔に感じる。
26歳になろうとしている今日まで、随分長い道のりだった。
でも、そんな長い人生がたった一瞬かのように感じた。
少しだけ昼寝をして、ちょっと重めの夢を見ただけのように感じた。
「あれ?僕は何をやっていたんだっけ」
そんな感じだった。
町はそうやって僕を当たり前のように受け入れた。
街灯や昔からある飲食店と同じように、僕を古い友人としていつものように迎え入れてくれた。
その空気があまりにも自然だったので、僕は怖くなった。
本当は僕の人生なんてなかったんじゃないか、と心配になった。
小学生の時から今までの、あるはずのない思い出がこの町にあるかのようだった。
僕はそれをスラスラ言えそうで混乱した。

今、僕はどこにいるのだろう?
僕は本当にここにいるのだろうか?

混沌と暗闇の中で、僕は26歳になる。
でも、僕は幸せです。
ありがとう。