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   <title>清塚信也 OFFICIAL BLOG</title>
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   <subtitle>ピアニスト/コンポーザー清塚信也のオフィシャル・ブログ</subtitle>
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   <title>ダイアリー</title>
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   <published>2008-12-12T14:04:02Z</published>
   <updated>2008-12-13T04:06:04Z</updated>
   
   <summary>「僕の勤めている会社は外資系なんだ」と突然その男は言った。 イタリアかどこかのぴ...</summary>
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      「僕の勤めている会社は外資系なんだ」と突然その男は言った。
イタリアかどこかのぴったりとした高級スーツを着こなし、
香水の匂いを辺り一面に漂わせながら、男はパソコンで仕事をしているらしかった。
僕が男の隣りの席で雑誌を読んでいると、突然男は言葉を発したのだった。
「僕の勤めている会社は外資系なんだ」
カタカタカタとパソコンのキーを叩く音を響かせ続けながら、男は決して画面からは視線を外さない。
最初僕に話しかけているのかどうか分からなくて、僕は周囲をキョロキョロと見廻してみたが、
結局誰に話しかけているのか分からなかった。
「外資系はね、能力だけでなく、センスや人柄も評価の対象になるんだよ」

僕らは今、新千歳空港発、羽田空港行きの飛行機に乗っている。
中央の座席は３つ続き、両端は２つ続きになっているが、僕らは中央の３つ続きの席に座っていた。
僕が真ん中、外資系の男は僕の左隣りだった。
「君の読んでいるその雑誌、会員制の割と専門的な経済誌だよね」
男は相変わらずパソコンの画面から視線を外さない。
「君も会社勤め？君も外資系？」
僕は直感的にこの男とは仲良くなれないと感じていたので、あまり話す気にはならなかった。
「いえ、会社勤めではありませんし、雑誌は友人から貰ったもので暇つぶしに読んでいるのですよ」
と、ここで突然僕の右隣りの女の子が泣き始めた。
お母さんが抱いている３歳くらいの女の子だが、突然何かがプッツンしたかのように大声で泣き始めた。

僕は子供の泣く声が好きだ。
コンサート中に泣かれて困る事もあるが、僕はそれでもまだ微笑みたくなってしまう。
子供の泣き声は未来を呼ぶ声だと感じる事があって、その子の未来がとても愛おしいものに感じられる。
僕は大泣きを始めた右隣りの女の子に変な顔をして笑いかけようとした。
「あのね、うるさいですよ。ここはね、飛行機。ヒコウキ。分かりますか？
子供のしつけは親のやることでしょ。さぁ、ここまで言えばわかりますね」
男は初めて画面から視線を外してこちらをのぞき込んでいた。
頬がテカテカしていて、そのテカリにパソコンの青白い画面が反射していた。
「ねえ、君もうるさいと思ったらちゃんと言って良いんだよ」
右隣りの相変わらず泣きやまない子供を抱いた母親は「ごめんなさいごめんなさい」と謝っている。
「いえ、僕は大丈夫です。子供も好きですし、子供の泣き声も結構嫌いじゃないです。
それより、外資系のお兄さん、あなたのパソコンのキーを叩く音の方が僕はイヤです」
と僕がハッキリとした声で言うと、男は神経質そうに右の頬だけをぴくぴくと動かしていた。
それと同時に女の子は泣きやんだ。

それにしても「結構嫌いじゃない」とは我ながら変な言葉だ。
結局、飛行機が着陸するまで女の子は一度も泣かなかったが、
着陸してからスポットに飛行機が到着するまでの間、また雄叫びのような大声を上げて泣き始めた。
CAのお姉さんまで心配になってしまうくらい酷く泣いていた。
その子のお母さんも含め、そこにいる全ての人々が「どうしてここまで大泣きするのか」が分からなかった。
いくら子供とはいえこれは少し泣きすぎだ。
心配になってしまうくらい泣きすぎだ。
やがて飛行機はスポットに到着し、僕らの座っているすぐ左隣りの扉が大がかりに開いた。
そして、開いた瞬間、女の子は僕の方をぷいと素早く向いて、

「ばいばい」

と言った。
それっきり、女の子は泣かなかった。
もし、あの女の子が僕とのお別れを惜しんで泣いてくれていたのだとしたら、
なんだかちょっと心温まる話じゃないか。

      
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   <title>フィギュア・スケート　ミュージック・セレクション08 - 09</title>
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   <published>2008-12-09T15:00:00Z</published>
   <updated>2008-12-01T18:41:37Z</updated>
   
   <summary>人気選手の新たな感動を演出する名曲の数々を収録！ フィギュア・スケート競技会&apos;0...</summary>
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      <![CDATA[人気選手の新たな感動を演出する名曲の数々を収録！
フィギュア・スケート競技会'08年～'09年やアイス
ショーで国内外の人気選手が使用する曲を収録した
コンピレーションアルバム。
清塚信也演奏による「ドビュッシー／月の光」収録！

発売：ワーナーミュージック・ジャパン　
WPCS-12147
定価￥2,500（税込）

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   <title>降るべきじゃない雨</title>
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   <published>2008-11-24T13:33:26Z</published>
   <updated>2008-11-24T13:33:59Z</updated>
   
   <summary>繋がるとき、繋がらないとき。 願いが叶うとき、願いが破れるとき。 ねえ、人生って...</summary>
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      繋がるとき、繋がらないとき。
願いが叶うとき、願いが破れるとき。

ねえ、人生って本当に色んなタイミングがある。

今日は雨の一日。
それはタイミングとしてあまり嬉しくない雨だった。
今日の雨は、なんとなく、降ってはいけない時に降っているような感じがする。
降る予定がなかったのに降ってしまった雨…。

「僕は生まれた時代を間違えた。タイミングが悪かったよ」
と、諦めを含んだ複雑な微笑みを浮かべて僕に話した人がいた。
「もう、死にたいよ」ともその人は言った。
「夏にね、いくら温度を下げて冷たくしても『冬』にはならないでしょ？」
その人は中性的な話し方をする。
女性の強い心と男性の繊細な器を持っている。
その人が女性なのか男性なのかは、、、秘密。
「冬の寒さは冬だけのものなんだ。タイミングだよ。死も同じ。
夏に寒くしてもそれは冬ではなのと同じように、死は向こうから訪れないと死じゃない。
自分で設定した死はほんものじゃないと思うんだよ」

死は季節。

だから、死は僕らが勝手に設定できるものではない。
死はいつか訪れるし、皆に訪れるという所は平等だ。
金持ちも権力者も関係なく。
だけど、死は向こうからやってくるから死。
それは自由には選べない。
僕は中学生の時「いざという時は死があるさ」と言い聞かせて色々と頑張った記憶がある。
でも、それは間違えだったという事だ。
死ぬ権利というものは自由じゃない。
死から選ばれなくてはいけないんだ。
ミュージカル「エリザベート」のように。

僕は、あらゆる「タイミング」を自分で演出できたら、と思う。
でも、いつもそのせいで僕は苦しむ事になる。
それでも、最近、少しずつ少しずつ、
季節に逆らわないで生きようと思えるようになってきた。
今日の雨…。
なんだか少し今日の雨が好きになってきた。
冬の寒さを感じるために暖房はつけず、
雨が降っている事を確かめるために音楽もかけず、
今日は静かな夜を迎えようと思う。

      
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   <title>山口・２日目</title>
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   <published>2008-11-21T12:05:05Z</published>
   <updated>2008-11-21T12:05:38Z</updated>
   
   <summary>山口での２日目は美しい晴れだった。 夜の冷たい雰囲気とはまったく違う景色がそこに...</summary>
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      山口での２日目は美しい晴れだった。
夜の冷たい雰囲気とはまったく違う景色がそこには広がっていて、
ホテルから観られる山々に囲まれた町並みは、穏やかで表情豊かだった。
僕は昨日到着した時の、寂しい、冷たい町を想像していたので、
カーテンを広げた時に一気に広がったこの光景にいささかの感動を覚えた。

僕はしばらく立ちつくして、色んな建物や色んな車を観察していた。
そして、何らかの縁で僕が将来ここで暮らす想像をして、
少し運命や人生の不思議さにパニックを起こしてしまった。
全ての出逢いに意味があるとしたら、僕がこの町に出会った意味は何だろう？
そんな事を考えながら、僕は今まで出逢った人、別れた人の事を思いだしてみた。
思い出してみると、出逢いも別れも、本当に様々な形があった。
運命的に出逢った人、劇的に出逢った人、すれ違って別れた人、成り行きで別れた人、、、

生きているのに、どうして別れなきゃいけないのだろう？

僕は「死」による強制的な別れを知っている。
それを知っていると、生きているのに別れるという事にとても強い反感を覚える。
それでも最近は「仕方がない」という言葉をやっと覚えてきた。
人は生まれた時に両手で水をすくう。
そして、死ぬまでなるべく水をこぼさないように生きる。
でも、絶対に、絶対に、水は手のどこかからするすると抜けていってしまうのだ。
一滴もこぼさないで生きるなんて、無理だ。
でもだからといって諦めて水をぶちまけてしまってはいけない。
最後まで、大切に、大切に、その水を守らなくてはいけない。
守ろうとするその姿勢が大切なのだ。
「こぼしたくない」
そう思う事が、大切なのだ。

あっという間に時間が経っていた。
いつから立ちつくしていただろうか。
僕は思い出した一つずつの思い出を愛しく思った。
その全てが自分が生んだ子のように感じた。
一つずつ思い出をかき集めて抱きしめたかった。
「失いたくない」
そう思った。
僕には失いたくない思い出が沢山あり、今こぼしたくない水もまだ沢山残っている。
これが生きるという事だと思う。
幸せなんだと思う。

初めて来た山口の町並みは、そんな僕の思いで立ちを優しく迎えてくれた。
      
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   <title>寂しい旅</title>
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   <published>2008-11-20T13:59:58Z</published>
   <updated>2008-11-20T14:09:19Z</updated>
   
   <summary>今日僕は初めて山口宇部空港に降り立った。 羽田ほど大きくないし混んでもいないが、...</summary>
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      今日僕は初めて山口宇部空港に降り立った。
羽田ほど大きくないし混んでもいないが、
エネルギーがぶつかり合っていて活気があるように感じた。
空港という所は決まってそうだ。
広さや人数などに関係なく、空気に動きがある。
そして、多くの出逢いや別れがあるからか、
何かそこには「切なさ」みたいなものも感じられる。
僕はそういう空港の雰囲気が大好きだ。

空港から新山口駅まではバスを使うと便利だと言われたので、
空港のインフォメーションのお姉さんの言うとおりにした。
新山口に着くと、JRで山口駅まで行く必要がある事に気付いたので、
僕は迷わず普通列車に乗り込んだ。
特急と普通とあったのだが、新山口から山口に行く普通列車は、とても風情があった。
こんな風に言うと怒られるかもしれないが、
なんというか、すごく「田舎」っぽかった。
僕は旅好きだ。
それもひとり旅。
ひとり旅を美しく演出してくれるのは、土地柄がしっかりと出ている風情だ。
僕は、２両しかない普通列車に乗り込み、列車の出発を立ちながら待った。

列車は比較的空いていたから座る事も出来たのだが、
僕は列車で座るのが好きではないのでひたすら立っていた。
しかし、２駅も行くと学生たちが溢れるかのように入ってきたので、
立っていて良かったと思った。
学生たちは修学旅行かのように車内で楽しそうにしていた。
僕はそれを見ていてなんだかとても幸せだった。
うるさいし、決してマナーがあるとは言えないのだが、
それでも若い人たちが元気にいる事が愛おしかった。

列車は30分もすると山口に着いた。
山口に着くと、もの凄い冷気が押し寄せた。
想像の範囲を明らかに超えていた寒さに、僕は少し滅入った。
でも、この「滅入り」が良いのだ。
これこそが旅の醍醐味だ。
不安、緊張、そういったストレスの親戚たちが旅の隠し味としてスパイスを利かせてくれる。
僕はタクシーの運転手にホテルの名を告げた。
すると運転手は「すぐそこだから歩いたら？」と言った。
そうか、すぐそこなら自分の足で歩きたい。

「すぐそこ」というのはどういう意味だろうか？
僕にとってのすぐそことは、１ブロックくらい先の事だ。
でも、もう信号２つ分歩いていて、５，６分は歩いた。
僕は１人で歩くときは割に速い速度で歩くので、もう結構な距離を歩いたと思う。
勿論、まだ５，６分の範囲なのだが、
これを「すぐそこ」と言えるかどうかは疑問だった。
タクシーに乗ってもいい距離じゃないか。
相変わらず冷たい風が僕の体にぶつかっては離れてゆく。
途中で古い（半分くらいは店の灯りが消えている）商店街を横切った。
結局ホテルは７分歩いたくらいの所にあった。
確かに、タクシーに乗るには…

人の感覚というのは分からない。
価値観も分からない。

僕は大好き、ある人は大嫌い。
僕は正義だと思う、ある人には極悪に感じる。
でも、僕が愛していて相手も愛してくれる場合だってある。
「人それぞれ」
この言葉が、とてもネガティブに感じる時もあれば、愛しく感じる時もある。
どちらにしろ、僕はそういった感覚をゆっくり感じて人生を過ごしたい。
その一つ一つを情報として自分の生命や魂に刻み込みたい。

僕は、とにかく、寂しい旅が大好きだ。
      
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   <title>僕の位置</title>
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   <published>2008-11-12T13:12:50Z</published>
   <updated>2008-11-12T13:13:36Z</updated>
   
   <summary>瞳を閉じて、僕は自分が世界のどこにいるかを考えてみる。 いや、考えるんじゃない、...</summary>
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      瞳を閉じて、僕は自分が世界のどこにいるかを考えてみる。
いや、考えるんじゃない、感じてみる。
それから、永遠に暗い宇宙に浮かぶ真っ青な地球を想像する。
その後、太陽系を抜けて、何もない暗闇の冷たい世界を想像する。
そして、死よりも何もない無の世界に辿り着く。

僕は、何でもない。

それでも、僕の心臓は今日も動いていて、僕の血液は僕の体内を駆け回っている。
ラッシュ時の首都高速のようだ。
僕の血管が首都高速だとしたら、あの忌々しい三宅坂ジャンクションはどこだろう？
瞳を開けて、左手の中指の付け根あたりにある血管を撫でてみる。
そして、軽く押してみる。
血管を押すと、血管は自らの意志であるかのように元通りになる。

僕は、何でもない存在だけど、昨日も、今日も、ちゃんと生きた。
明日は、どうだろう？

こないだ、僕が小学生時代を過ごした「小手指（コテサシ）」という町に行ってきた。
昔は長く感じた道が短くなってたし、高いと感じていた壁が低かった。
でも、通学路だった道や何でもない道路を何気なく歩いてみると、昔のままだった。
そこにはまだ僕の人生があった。
しっかりと、僕の人生はその町で続いているようだった。

中学の時に僕はその町から去った。
もう、今となっては中学生の頃なんて大昔に感じる。
26歳になろうとしている今日まで、随分長い道のりだった。
でも、そんな長い人生がたった一瞬かのように感じた。
少しだけ昼寝をして、ちょっと重めの夢を見ただけのように感じた。
「あれ？僕は何をやっていたんだっけ」
そんな感じだった。
町はそうやって僕を当たり前のように受け入れた。
街灯や昔からある飲食店と同じように、僕を古い友人としていつものように迎え入れてくれた。
その空気があまりにも自然だったので、僕は怖くなった。
本当は僕の人生なんてなかったんじゃないか、と心配になった。
小学生の時から今までの、あるはずのない思い出がこの町にあるかのようだった。
僕はそれをスラスラ言えそうで混乱した。

今、僕はどこにいるのだろう？
僕は本当にここにいるのだろうか？

混沌と暗闇の中で、僕は26歳になる。
でも、僕は幸せです。
ありがとう。
      
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   <title>清塚信也 plays 天国はまだ遠く（composed by 渡辺俊幸）</title>
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   <published>2008-10-29T09:00:01Z</published>
   <updated>2008-11-06T23:22:33Z</updated>
   
   <summary>映画『天国はまだ遠く』オリジナル・サウンドトラックに 清塚信也がピアノ演奏で参加...</summary>
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      <![CDATA[映画『天国はまだ遠く』オリジナル・サウンドトラックに
清塚信也がピアノ演奏で参加。映画エンディングテーマ
「こと／熊木杏里 feat. 清塚信也」に加え、同映画の携帯
配信スピンオフドラマ「わたしが死んでも世界は動く」の
劇中曲２曲（清塚信也オリジナル曲）も併せて収録。
全編に渡り清塚信也のピアノがフィーチャーされています。
<a href="http://wmg.jp/kiyozuka/news.html">http://wmg.jp/kiyozuka/news.html</a>

「天国はまだ遠く」2008年11月公開
　
　原作：瀬尾まいこ（小説『天国はまだ遠く』新潮社）
　監督：長澤雅彦
　出演：加藤ローサ、徳井義実（チュートリアル）
　音楽：渡辺俊幸

発売：ワーナーミュージック・ジャパン
WPCL-10625
定価¥3,000（税込）

<img alt="天国はまだ遠く" src="http://www.ravenjam.com/kiyozuka/images/jacket_heaven.jpg" width="200" />]]>
      
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   <title>みなとみらい</title>
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   <published>2008-10-26T14:26:59Z</published>
   <updated>2008-10-26T14:27:18Z</updated>
   
   <summary>僕はどちらかというと時間に余裕を持って行動したい部類の人間だ。 流石に最近は時間...</summary>
   <author>
      <name>清塚信也</name>
      
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      僕はどちらかというと時間に余裕を持って行動したい部類の人間だ。
流石に最近は時間が勿体なくなってきたので、
１時間で行けるところを２時間みて行く事はなくなったが、
それでも出来るならば今でもそうしたいくらい時間に余裕を持っていたい。
要するに急ぐのが大嫌いなんだ。

僕は今日、みなとみらいへ45分も多く時間をみて出発した。
思いのほか道が空いていたので、さらに早く着いてしまった。
楽屋でお昼を食べるのが嫌だったので、
みなとみらいホールの目の前にあるカフェでサンドウィッチを頼み、
コーヒーをちょびちょびと飲んでいた。
１時間もそこで本を読んだり携帯に残っている好きなメールを読み返したりしていた。
ぼーっとした心になるととても心地よかった。
少しはアーティストっぽくしなきゃと言うことで、
一度みなとみらいホールを迂回してわざわざ楽屋口から入った。
なるべく時間をかけて楽屋に着くように、僕は絨毯の縫い目を踏まないように丁寧にぐずぐず歩いた。
まずは最初のエレベーターでB1へ。
そしてまた違うエレベーターに乗り換えて５階に行けば小ホールの楽屋に辿り着く。
この乗り換えた方のエレベーターは楽器搬入が出来るようにとても大きいサイズになっている。
普通の３倍はある。
ひとりで乗るのはいつも落ち着かない。
僕はそのビッグサイズエレベーターに乗ると、５階のボタンを押して、続けて閉めるボタンを押した。
そして、この大きな「部屋」のどこに立とうか考えた。
真ん中というキャラでもないので、一番奥の端っこに立つことに決めた。
エレベーターは難しい事を考えてる哲学者のようにコツコツと音をたてて上に上がっていった。

１階につくと、エレベーターが止まり「かば」が重い足取りで入ってきた。
かばがエレベーターに入ると、エレベーターが大きく揺れてちょっと位置が下がった。
かばは何事もなかったかのようにボタンを６階に押した。
かばはすごい音で鼻息を出していた。
かばは二足歩行していたので、息をする度に肩が上下に動いていた。
かばはピンクの小さなミニスカートを着ていて、真っ赤なピンヒールをはいていた。
「天才はね、タイミングが大切なのよ」とかばはボタンの方を見ながら言った。
僕に話しかけているのかどうかわからなくて、僕はおどおどしてしまった。
「まずはね、じっくりしぼってやるの。それからじっくり煮込むのよ」
僕はただ聞いていた。
「ここからが大切よ。じっくり煮込んだら、もうそこから出たくないよ〜って思わせるくらいドロドロに溶かしてやるの」
「ほう」と僕は言った。
「それでね、そいつの人生なんかないってくらい一つの事に没頭させるの」
「ほうほう」
「20歳になる頃、自分がどうしてそれをやっているのかわからなくなるの」
「それで？」
「それでね、最終的には麻薬のように、それがなくては生きていけないようにしてやるの」
「あまり良い話とは言えませんね」
「そうかもしれないわね。でも、見てる方は面白いわよ」
僕は頭に来た。
「あなたはあまり口のききかたが綺麗ではないですね」と言ってやった。
かばはだまってじっと前を向いている。
相変わらず鼻息をふんふんと鳴らしている。

エレベーターは５階に着いた。
僕はかばを横目にエレベーターを降りた。
僕の背中越しにかばが口を開いた。
「自惚れないで。あなたを天才っていってるんじゃないのよ」
僕は勢いよく振り返ってかばに反論しようと思った。
しかし、僕が後ろを向いた頃にはエレベーターはもう閉まっていた。
かばは一体何が言いたかったのだろう？
６階に追いかけていってやろうと思ったが、やっぱりやめた。
さぁ、ピアノ、弾こう。
大好きなみなとみらいで。
      
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   <title>恋人の部屋</title>
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   <published>2008-10-25T13:49:49Z</published>
   <updated>2008-10-25T13:50:53Z</updated>
   
   <summary>コンサートを終えると、シャワーのように降っていた雨が止んでいた。 辺りからは雨に...</summary>
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      <name>清塚信也</name>
      
   </author>
         <category term="DIARY" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.ravenjam.com/kiyozuka/">
      コンサートを終えると、シャワーのように降っていた雨が止んでいた。
辺りからは雨に濡れた草木の独特の匂いがしている。
僕は車に乗り込み、夕方前の西東京を走り出した。
「あなたのコンサートに行くのは、私にとって恋人の部屋に行くようなものです」
僕がロシアにいた頃（まだ十代だった）、あるロシア人のお婆ちゃんが僕のコンサートに来てそう言ってくれた。
あれはどういう意味だったのだろう？
７年経った今も、まだちゃんとは理解していない気がする。
でも、やたらと嬉しかったのを覚えている。

僕の車は高速へと入った。
高速道路は時間帯や季節で驚くほど表情を変える。
ちょうど夕日が綺麗に見えたりすると、
高速料金はこの景色を観るための入場料だったのだと思える。
でも、今日はあまり好きな表情ではなかった。
雨上がりの曇り空、三宅坂はいつものように渋滞している。
おかげで西東京から目黒の雅叙園に着くまでに１時間半もかかってしまった。
雅叙園に着くとすぐに假屋崎先生がお声掛けしてくださった。
先生は忙しそうに、前に前に素早く歩き、活き活きとしていた。
「パーティの前にお花を観ていってね」
輝くような金の長髪をなびかせて先生は風のように過ぎ去っていった。
本当に、生命力とエレガントさを纏った素敵な方だと僕は思う。

雅叙園の百段階段に生けられたお花達。
奇跡の融合を果たした花たちとそれを受け止め、その新たなる生命を受け入れる器たち。
百段階段を一段一段上がっていく度に、僕の心はどこかで痛みを覚えた。
僕は強く感動すると心が痛む。
それはまるで、すりむいた傷を消毒するときの痛みだ。
体の中で毒が調和されていくのが分かる。
百段登り切る頃にはすっかり気持ちの良い脱力感が僕に訪れていた。

芸術とは何だろう、美しさってなんだろう。

假屋崎先生の華道25周年記念パーティから帰ってくる頃には、
またシャワーのような雨が地面に降り注いでいた。
黒くなったアスファルトを見ていると、僕は原因の分からない不安に見舞われてしまった。
未来への不安なのだろうか？
それとも…？
何だかもやもやとした暗雲が僕の体内に充満している。
僕と僕の人生はこの先どうなるんだろう。
「迷ってる暇はないよ。お前達はそういう天命なんだ。意味なんか考えるでない」
僕の行きつけのBARのマスターが面倒くさそうに僕にそう言ってくれた。
僕のコンサートが恋人の部屋か。
僕ならずっと入り浸ってしまうな。
恋人の香りが仄かに残り、淡い思い出たちが生きている部屋。
そこから見える眺めはあまり美しいとはいえない。
でも、僕はその景色でさえも愛してしまう。
朝の9時なのに21時と間違えて表示されたデジタル時計や、
無造作に置かれた領収書などにも愛を送らずにはいられない。
切ない。
寂しい。
怖い。
不安。
でも、そんなコンサートにしたい。
愛されるピアノを弾いていたいと強く思う。
      
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   <title>『清塚信也 Birthday Concert 2008』開催決定！</title>
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   <published>2008-10-20T17:07:16Z</published>
   <updated>2008-10-20T17:08:09Z</updated>
   
   <summary>清塚信也 Birthday Concert 2008 開催日：11月23日（日）...</summary>
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      <name>清塚信也</name>
      
   </author>
   
   
   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.ravenjam.com/kiyozuka/">
      清塚信也 Birthday Concert 2008
開催日：11月23日（日）
開　場：17:00
開　演：17:30 （終演予定20:30）
ゲスト：鍵冨弦太郎氏（ヴァイオリン）
定　員：先着65名様限定 　
席　次：全席指定（席次はお申込受付番号順）
お食事：ブッフェ料理、デザート、フリードリンク
料　金：￥21,000（税込）＜コンサート＋ディナー＞
会　場：ザ・プリンス パークタワー東京『メロディーライン』
　　　　The Prince Park Tower Tokyo（東京都港区芝公園4-8-1）
駐車場：無料駐車場完備（ザ・プリンス パークタワー東京内）
最寄駅：都営地下鉄大江戸線赤羽橋駅（(赤羽橋口）より徒歩２分
　　　　都営地下鉄三田線芝公園駅（A4出口）より徒歩３分
　　　　http://www.princehotels.co.jp/parktower/access/index.html
宿　泊：宿泊をご希望のお客様は下記URLをご参照の上、ホテルに直接ご予約ください。
　　　　http://www.princehotels.co.jp/parktower/
主　催：株式会社レイヴンジャムファクトリー
　　　　http://www.ravenjam.com/
＜お申込み方法＞
・メールにて受付けます。concert@ymail.plala.or.jp
・メールタイトルを「11月23日／清塚信也係」として下さい。
・氏名、年齢、郵便番号、住所、電話番号、購入枚数を明記の上、お送り下さい。
　（同時に２名以上のお申込みの場合も、必ず全員の氏名、年齢、郵便番号、住所、電話番号を記載して下さい）
・皆様からのお申込みメールを確認後、お申込受付番号、料金振込用口座番号を明記したメールをご返信致します。
・入金確認をもって正式に受付完了となります。後日チケットを郵送致します。
・全席指定です。
　（席次は「お申込受付番号順」となりますので予めご了承ください）
　（同時に複数名お申込みの場合、お申込みメール記載のお名前の順番が席次に反映されます）
      
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   <title>道</title>
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   <published>2008-10-20T00:09:28Z</published>
   <updated>2008-10-20T00:09:46Z</updated>
   
   <summary>小学３年生の時の僕は、その道が大嫌いだった。 ひたすら真っ直ぐにのびていて、周り...</summary>
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      <name>清塚信也</name>
      
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   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.ravenjam.com/kiyozuka/">
      小学３年生の時の僕は、その道が大嫌いだった。
ひたすら真っ直ぐにのびていて、周りが巨大な駐車場になっているその道は、町の中にある砂漠のようだった。
僕はその道を通る度に何故か切ない気持ちになった。
冬の風にさらされている時でも、夏の炎天下に立たされているかのようなストレスを感じた。
それは倦怠感や無力感にも似た感覚だった。
その道は僕の住んでいるところから電車で１時間半は離れていた。
週に一回の音楽教室に通う時だけしか通らなくて良かったのは、僕にとって唯一の救いだった。
もし、この道が家のすぐそばにあって毎日のように通らなければいけなかったら…。
と想像するだけでゾッとした。

僕は今25歳になった。
中学２年生の時、運命的にあの大嫌いだった道のすぐそばに引っ越してきた。
でも、中学生の頃は色々と忙しくて、小学生の頃に嫌いだった道の事なんてもうどうでもよくなってしまった。
それどころか、気がつくと、25歳の今はこの道が好きだ。
車も通らない、人通りも少ない、スペースも開けていて、ちょっとノスタルジックなこの道が好きだ。
飾り気のない寂しい道だけれど、僕は好んでよく通っている。

今なら僕は知っている。
昔、砂漠のように感じていた駐車場の先に何があるのか。
真っ直ぐどこまで続いているのか。
僕はこの道の表情を知っている。
朝昼夜。
春夏秋冬。
雨が降ったり風が吹いたりするし、雪も時々降る。
僕はこの道を体験したんだ。
だから好きになれた。
何かをちゃんと好きになるには、それなりの「情報」が必要だ。
情報とは知識ではない。
ただ知るだけではだめだ。
何度も通って、いつも近くに感じて、つまずいたり走ったりしてみなくてはいけない。
その通りの名前が何で、何メートルで、どれくらい傾斜があるのかを知っていたって全然好きになれない。
ちゃんと体験しなくては情報にはならない。
そうやって愛が増え、人はまた一つ成長していく。
情報の多さと愛の深さは、比例するのかもしれない。
明日は、その道で口笛を吹きながら歩いてみようと思っている。

完

      
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   <title>サラリーマン２</title>
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   <published>2008-10-18T01:06:42Z</published>
   <updated>2008-10-18T01:16:40Z</updated>
   
   <summary>越後湯沢から直江津に行く最終の特急列車内には僕とサラリーマンだけしかいなかった。...</summary>
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      <name>清塚信也</name>
      
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   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.ravenjam.com/kiyozuka/">
      越後湯沢から直江津に行く最終の特急列車内には僕とサラリーマンだけしかいなかった。
他の車両には他の客もいるのかもしれない。
「直江津までですか。わたしも直江津までです」
どうしてこのサラリーマンは僕の行き先を知っているのだろうという表情を僕が浮かべていると、
サラリーマンはアーモンド型の目を細くして気味が悪いほど爽やかな笑顔を浮かべた。
「先ほど切符が見えたのですよ。いやだなぁ、わたしはそんなに怪しいものではありませんよ。ただのサラリーマンです」
と言ってからサラリーマンは僕から目線をはずし、逆の方の窓に体ごと向きを変えた。
「でもね、ただのサラリーマンですが、もうすぐ死にます」
僕から目線をはずしたままサラリーマンは話す。
「決めてたんです。55歳でぴたりと人生を終わらせると」
55歳。
サラリーマンは見かけより歳をとっているようだ。
「中学生の時から決めていてね。わたしの人生がどんなに不幸だろうと、どんなに楽しかろうと、絶対に55歳でわたしは死ぬと」
この人は酔っていると僕は思うことにした。
「お酒は…」とサラリーマンは言いながらまたこっちに体を向けた。「…飲めませんよ」
「嫌いなんです。わたしはわたし自身の人生をコントロールしたいという強い欲求があるので、
アルコールによって自分の意見や意志を失うのは我慢ならないのです」
車掌が切符を見回りに来た。
車掌は無駄な動きを一切せずに僕の手から切符を取るとその切符にパンチを入れた。
切符を僕に返す時に小さくありがとうございますと呟いた。
まるで独り言のように。
「わたしの両親はわたしが小さい頃に死にました。そのあと親戚中をたらい回しにされました。
あの時がわたしの人生の中で一番苦しい時だった」
サラリーマンは車掌に切符を見せている間中そこに誰もいないかのように引き続き喋り続けていた。
「いやね、暴力を受けたり、酷い目に遭ったりしたわけではないのです」
列車は走り続ける。
真夜中の温泉地を。
「それはそれは親切にしてもらいましたよ。中にはそこの家族の本当の子供より大切にされていたくらいです」
僕は一度時計を見る。
直江津まではあと20分くらいある。
「でもね」とサラリーマンは言った。「耐えられなかったのです」
「あの、かわいそうな子と言わんばかりの目が。みんなわたしの事を不幸な子だと思ってくれているのです。
その悲観的な目が僕には耐えられなかった」
今度は熱いおしぼりを配りにおばちゃんが入ってくる。
おばちゃんは制服を着ているのだが、その制服のサイズがぴったりな事に僕は無償に切なさを感じた。何故だろう？
「それでわたしはある日家を持たずに路上で暮らす事にしました。ホームレスですよ。いわゆる」
サラリーマンは配られたおしぼりで顔を拭く。
「あ、いけないいけない。またこんなに自分の話をしてしまって…」
サラリーマンは本当に恥ずかしそうだった。
「すみませんね。でも今日くらいは勘弁して下さい。何せ、人生最後の日なのですから」
そう言うとサラリーマンは直江津に着くまで二度と口を開かなかった。
僕の感傷的な気分は最高潮に達した。
流れゆく景色を観ているだけで涙がこぼれそうだ。
サラリーマンはどうやって死ぬ気だろう？
僕はサラリーマンが自らの命を絶つ姿を想像して怖くなった。
そして、全てが嘘の世界なのではないかと思うほど現実離れした悲しさに襲われた。

直江津に到着すると、サラリーマンは「それではお元気で」と一言僕に告げて足早にどこかへ去ってしまった。
僕はタクシーに乗り込む。
そしてホテルに着く。
シャワーを浴びてベッドに入る。
そしてあのサラリーマンがこの街のどこかで死ぬ想像をする。
眠れない。
朝が来る。
一睡もできないまま午前中の講義へ向かう。
夏の嵐のような雨が降っている。
しかし講義が終わるまでには止んで快晴になっていた。
僕はお昼を食べてから直江津の駅へとタクシーで向かった。
越後湯沢へ行く特急が直江津駅に来るまでにはまだ30分もあった。
仕方がないので僕はホームで本でも読んで待つことにした。
しかし、紙の上で踊る活字達は僕の脳内には一つも入ってこられなかった。
僕は本をぱたりと閉めた。
あのサラリーマンはどうしたろう？
本当に死んでしまったのだろうか？
どうして55歳で死ぬと決めたのだろう？
僕は自分も55歳で死ぬと仮に決めてみた。
何かが変わった気がする。
僕の中で止まっていた時計が動き出したようにも感じた。
死がリアルになって初めて生きる心地がする。
でも、僕は死なない。
きっと、人生で守り続けなくてはいけないルールを他にみつけ、それは「生きる」という方向に繋がっているに違いない。
それにしても、あのサラリーマンのこの世のものではないような爽やかな笑顔は何だったのだろう？
そこに真の幸せがかのような。

僕は生きるという事の意味を永遠と考えていた。
直江津から越後湯沢まではあっという間だった。
何度もこの乗り換えをしたことがあるが、越後湯沢から東京行きの新幹線への連絡は面倒くさい。
なぜか、いつもそう感じる。
越後湯沢の特急が居心地いいのかもしれない。
その証拠に、東京からこっちに来る時の乗り換えにはストレスがない。
切符を３枚同時に入れ、新幹線ホームへと僕は急いだ。
僕と同じように東京方面に行く客が沢山いる。
エスカレータはその客たちの大行列になっていた。
僕は人混みが苦手だ。
東京行きの発車時刻まではあと10分ある。
もう少しここで待ってあの行列がなくなってからホームへと行こう。
僕は暫く人々を観察していた。
人々は宿命的な何かを背負っているような真剣な顔をして乗り換えをしていた。
何だか、みんな幸せそうじゃなく見えた。
若い観光客、お年寄りの温泉巡り、通勤、通学、その他色々あるだろう。
さまざまな人達が人生の「乗り換え」をしていた。
何かの実験をされているようにみんな同じ動きをしていた。
僕もきっとあの中に入ればその一員になるのだろう。
そこには「サイクル」というものがあった。
僕は怖くなった。
人々が工場で機械に一つ一つまったく同じように仕上げられていく製品のようにみえた。
僕がそうやってじっとサイクルを観ていると、知っている顔が現れた。

あのサラリーマンだった。

サラリーマンは昨日の穏やかさが嘘のように別人の顔をしていた。
深刻で暗くて切なそうで緊張しているようにみえた。
サラリーマンは昨日とまったく同じ格好でいた。
サイクルの中の一つになっていて、昨日まとっていた特有の空気は感じられなかった。
それでも僕はどこかで嬉しかった。
何が嬉しいのかよくわからなかったが、サイクルも悪くないと思えるようになった。
「生きていれば日はまた昇る」
僕はそう呟いて途絶えないエスカレータのサイクルに飛び込んでいった。

僕は夜が好きでいたい。
それには、朝を経験しなくてはいけないのだ。
朝日を知らなくては、夜の風の甘さは味わえないのだ。
こなれた感じで新幹線に飛び込んでいくサラリーマンの横顔を少し後ろから僕は見た。
昨日のような幸福感はないにしろ、何だか、ちょっと勇ましくて格好良く感じた。
東京行きの新幹線は、僕がギリギリで乗り込むとすぐに出発した。
「さぁ、帰るぞ」
と一言、僕は口に出して言ってみた。

完
      
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   <title>サラリーマン</title>
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   <published>2008-10-15T17:55:40Z</published>
   <updated>2008-10-15T18:00:21Z</updated>
   
   <summary>僕は20時12分東京発の最終電車に乗り込んだ。 考えてみればこの時間から東京駅発...</summary>
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      <name>清塚信也</name>
      
   </author>
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   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.ravenjam.com/kiyozuka/">
      僕は20時12分東京発の最終電車に乗り込んだ。
考えてみればこの時間から東京駅発の新幹線に乗るのは初めてだ。
しかも上越新幹線。
北だ。
北に行く新幹線は寂しく感じる。
それに付け加えて最終電車という事が、より一層僕の寂しさを強いものにした。
でも、感傷的な気持ちは疲れているときには良い。
慰められたような気持ちになる。
僕がギリギリに乗車したため、新幹線はすぐに動き出した。
僕の乗っている車輌には殆ど人がいない。
ちらほらと人影が見えるが、そのどれもが本当に「影」かのように存在感のないものだ。
僕は静かに動き出した新幹線の車内で、まどろみのような感傷に浸っていくばかりだった。

新幹線は１時間と少しかけて越後湯沢に止まった。
僕はそこから直江津という駅まで行く。
越後湯沢での乗り換えは、僕の感傷的な気持ちを益々促進させた。
ひとつはその空気の良さ。
もうひとつはホームのローカルな感じだった。
空気の良さはただの新鮮さではなく、冬の温泉地の夜特有の冷たい空気だった。
乗り換えの列車は10分程度の待ち時間だというのに、ホームにはまだその姿が見られない。
この季節の越後湯沢がこれ程寒いとは知らなかった。
もう、冬の頭角を現している。

「……分発の金沢行き最終電車は点検のため５分ほど遅延致します」
アナウンスが駅構内に響き渡った。
誰もいない学校の校舎に響き渡るチャイムのようだった。
そのアナウンスの声がまた「おやすみ」とそっと告げる父親のようなトーンだった。

「まだ良い方です」
後ろから男性の声がした。
僕はその男性を見る前から、
何故かこの男性が典型的なサラリーマン風の格好をしていて、
黒縁眼鏡をしていることまでが分かった。
「これで２月ともなると真っ白な雪化粧です。そうなるともっと寂しいですよ」
僕は首だけを後ろに向けてサラリーマンの話を聞いていた。
「いやぁ、お若いのにお一人で越後湯沢からの最終に乗るなんて、面白いお方だ」
僕はゆがんだ笑顔をわざと作って鼻でふんと音をたてた。

列車がやっとホームに滑り込んでくる。
僕は切符を見て座席を確認する。
１号車、３番、C席。
席を見つけて荷物を上の棚に上げて座ると、通路を挟んで隣の席にさっきのサラリーマンが座っていた。
サラリーマンはこっちを向いて僕を直視している。
にこやかな笑顔を見せ、黒縁眼鏡の奥の瞼は穏やかな曲線を描いていた。
「わたしはね、今日で死ぬんです」
サラリーマンは確かに、そう言った。

つづく

      
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   <title>天国はまだ遠く</title>
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   <published>2008-10-09T10:00:21Z</published>
   <updated>2008-10-09T10:00:47Z</updated>
   
   <summary>答えはピアノだった。 波の音、風が僕に勢いよく当たって過ぎ行く音。 まるで風が僕...</summary>
   <author>
      <name>清塚信也</name>
      
   </author>
         <category term="DIARY" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.ravenjam.com/kiyozuka/">
      答えはピアノだった。

波の音、風が僕に勢いよく当たって過ぎ行く音。
まるで風が僕に悪戯をしながらじゃれているようだ。
風は僕と交じり合いながら、
指の間、髪の毛の間、腕の中、両足の間をぐるぐると巻き込みながら抜けていった。
砂浜にピアノ。
水平線を区切るようにピアノ。
遠くから見ると、グランドピアノは砂浜にあってはならないもののように浮いて見えた。
しかし、数分もすると砂と風はすぐにピアノを体の一部として迎え入れた。
ピアノの足下に砂が溜まってくる。
僕はピアノに近づき、恐る恐る音を鳴らしてみた。
響きはない。
微かに耳元に届く音は、まるで独りぼっちだった。
音はピアノから発音され、すぐに風と共に消えた。
座っているだけで髪が全て同じ方向になびく程の風力。
隣の人の話している声も聞こえないくらい風の音は轟音だった。
僕の奏でるピアノの音は失われていた。
僕には届かなかった。
それは、風のせいなのだろうか？

僕はずっと人生という迷路をさ迷っていた。
美しい音とは何か？格好いいリズムとは何か？心地よいテンポとは何か？
素敵な音楽とは何か？ピアニストとは誰か？僕は誰なのか？人生とは何なのか？
僕の中にあるクエスチョンは行き先の多すぎる別れ道のようだった。
そのどれもを手に入れたくて、僕は立ち往生していた。
道が多すぎて、一つを選ぶ事なんて出来なかった。
だから、別れ道の基の部分でずっと立ちつくしていた。
時間は進む。僕の人生は過ぎ去って行く。
ただ立ちつくしているだけで、時間は刻一刻と死に向かっている。
でも、相変わらず道が選べない。
時間を経過させたせいで、逆にもっと選択するプレッシャーを感じるようになってしまった。
もう随分長くこうして人生を迷っている。
こんな風にずっと迷っていると、いつしか音が聞こえなくなった。
僕の耳から音が消え失せた。
暗い自分の部屋でただ独り、僕は大切に大切に鍵盤を人差し指で鳴らしてみる。
だめだった。
感触だけが淡い春の思い出のように微かに心に残り、音だけが僕の透明な体を通り抜けてしまう。
小学生に戻りたかった。
あの頃は自分が誰か分かっていた。
自分が何故ピアノに向かっているか、分かっていた。
音は、僕の心をいつも暖かく抱きしめてくれたし、ピアノはいつでも僕の事を待っていてくれた。
今、僕は独りぼっちだ。
そして、ピアノも独りぼっちだ。
二つの運命はどこかで生き別れてしまった。
複雑すぎる迷路の中で別れた僕たちは、もう二度と出会えないように思えた。

僕は廃人のように東京をさ迷った。
流れる景色を横目に、僕は僕の事を呪った。
タクシーからは東京タワーが見えている。
僕にはその燃えるような東京タワーが心臓にみえた。
僕は生き物の体内にいて、今心臓部を見ている。
人生という獣に飲み込まれて、もう出てこられない迷路をさ迷う運命だ。
夜の東京は多くの人生が交差していた。
本当に色んな人がいた。
人の形をした音楽のようだった。
針でつつくと風船のように割れて、中から七色の音色が出てくるような気がした。
人は美しかった。
でも、切ないようにも見えた。
気がつくと僕は恵比寿駅の前にいた。
どこにあてもなく、僕はひっそりと歩いた。
人の流れとは逆に歩いた。
少し歩くとアートカフェにたどり着いた。
何年も前によく来た。
あの頃はまだ音が満ち溢れていた。
でも、アートカフェの主人は僕の音楽を認めていないようだった。
白髪で風格のあるその男主人は穏やかな顔で何一つ僕のピアノの感想を言わなかった。
きっと、僕が若かったのだろう。
僕の若々しい音楽を認めなかったのではなく、見守ってくれたのだと思う。
今思うと、そう思える。
「確か木目のスタンウェイがあったな」僕は呟いて階段を下りていった。
アートカフェはライブを終えたばかりで、人々の気配だけ残して殆ど誰も客がいなかった。
丁度良いときに来た。
僕は独りでビールを飲んだ。
あの時僕を見守ってくれた店主は相変わらずの穏やかな表情で僕を迎えてくれた。
もう何年も来ていないのに、ずっと通っている常連のように当たり前に自然に僕を店に迎え入れてくれた。
懐かしい。
僕の時間はここで止まっていたように思える。
でも、もう一人の僕は確かにここから離れて生きて来た気もする。
そして僕は気付いた。
時間は過ぎている。
口に出してずっと言い聞かせてきた事だけれど、初めて実感する事が出来た。
そう、時間は、確かに、非常に、過ぎている。
近づいては遠く離れ、近づいては遠く離れ、僕の隣を通り過ぎている。
「ピアノ、弾いてみたらどうだ」
店主が僕に言った。
僕は静かにピアノに近寄り、音を鳴らしてみた。
大切に、壊れてしまわないように、秘密に、そっと鳴らしてみた。
音は、聞こえなかった。
僕ははにかんだ表情を浮かべて「良いピアノですね」と店主に告げた。
「星に願いを」をジャズ風にして弾いてみた。
いつしか僕以外の客も増えていた。
アートカフェからは拍手が起きた。
でも、僕には音がない。
外では雨が降り始めていた。
無情にも、僕にはその雨の音だけが耳に残った。

楽譜を見て音を鳴らせる。
僕には実際に鍵盤を叩かなくても音が鳴らせるという特技がある。
その楽譜の音は、悲しみと孤独に満ちあふれていた。
テンポとリズムというメロディを束縛する呪いから解かれずに、孤独な鳴き声をあげているかのような音だった。
僕は何故かイタリアに行って金縛りにあった時の事を思いだした。
体の自由を奪われ、声にならない声を叫ぶ。
その楽譜の音は僕の今の心境にそっくりだった。
まるで音を失ったピアニストの人生を曲にしたかのようだった。
レコーディングスタジオ、オーケストラ、マイクが森林のように立っている。
この曲をサウンドトラックとして迎え入れる映画「天国はまだ遠く」の長澤雅彦監督と
この曲の作曲者渡辺俊幸さんが演奏を見守る。
テレビ局が僕の密着取材に訪れている。
スタジオは賑やかだった。
また、多くの人生が交差した。
人という音楽がハーモニーを響かせていた。
また、僕一人だけがそこに入れていないような錯覚に陥った。
音楽は、虹色のハーモニーや孤独な響きや孤高な切なさを響かせているようだった。
僕にはピアノの音が聞こえなかった。
悔しかった。
涙が出そうなくらい、悔しかった。
どうして聞こえないのだろう。
僕は全ての気持ちをそこにぶつけた。
出ているはずの音を必死になって聴いてみた。
「お願いだ。僕に音を届けて下さい」
心の中でそう祈り続けた。
戻れ。戻れ。僕の音よ、戻れ。
顔が真っ赤になるくらい息を止めて音に聞き入った。

少しだけ、少しだけ、いま、ほら、微かにピアノの孤独な音色が聞こえた。

音が戻ったのはたったその一瞬だった。
それでも、僕は懐かしい旧友に会えて、とても嬉しかった。
幸せだった。何よりも、幸せだった。
弾き終わって肩で息をするほど疲れていた。
その夜、全てのレコーディングを終えて帰宅する頃、僕は38度の熱を出していた。
頭が朦朧とする。
僕の中を音楽が駆けめぐる。
さっき録音していた音が再び頭を流れる。
クラシックのショパンやベートーヴェンと交差して不協和音になる。
意識が遠のく。
そんな風に意識の世界をさ迷っていると、いつしか僕はモスクワ留学時代に戻っていた。
僕は歩いていた。
吹雪でマイナス30度の中、ただ歩いていた。
もう１時間半も歩いている。
朦朧とする頭。
この場で座り込んでじっと死を迎えたいような穏やかな気分だった。
孤独で、寂しくて、僕にはもう何もなかった。
あの頃僕は全てを失ったような気分だった。
人間関係がうまく行かず、自分をうまく表現出来なくて、友達も恋人も失った。
ピアノも僕のもとを去った。
逃げるようにモスクワに来た僕は、ただ一人吹雪を彷徨っていた。
本当に、このまま死ぬのかと思った。
防寒具も殆どちゃんと着けていなかった。
40度の熱を出しながら、僕は歩いた。
そして、家まで帰った。
部屋に着くと、僕は真っ先にピアノに向かった。
「おい、お前はどうして僕のもとを去った？」
和音を一つ鳴らす。
「僕はこんなに君を愛しているのに」
違う和音を鳴らす。
段々激しく鳴らす。
最後には肘や腕全体を使って鍵盤に覆い被さる。
悲惨な音がした。
ピアノの悲鳴だ。
僕は泣き続けた。
朦朧とする頭を支えながら、おいおいと泣き続け、ピアノに謝った。
「ごめんよ、ごめん。僕が悪いんだ。ほんとに、ごめんよ…」
僕はうな垂れた。
そして、ペダルを踏み、人差し指で優しく鍵盤を舐めるように触ってみた。
今度は、暖かい音がした。
音は線となって僕の体に入り込み、緑色の光に変化して僕の心を落ち着かせた。
暖かかった。
幸せだった。
そして、僕は意識を失った。

映画「天国はまだ遠く」のエンディングテーマ「こと」を歌う熊木杏里さんと音楽を作った。
熊木さんの「こと」は、純粋で、素直で、率直で、優しくて、不器用な感じがした。
人より考える事が多いから、自分の容量より湧き出てくる気持ちの方が大きいから、
それをアウトプットするのに時間がかかってしまうような、素敵な人を表現している歌声だった。
僕はピアニストとして、ソリストとして、伴奏に徹するのはプライドが許さなかった。
でも、この曲とこの歌を聴いて、初めて自分がただの歯車になりたいと強く思った。
熊木さんは僕を「大人っぽい」と言った。
でも、僕はその逆だと思った。
音を失うような僕に、大人は似合わない。
僕は何も解っていない。
何も出来ていない。
僕はこの「こと」という曲において、強い悲しみを得た。
そして、傷から自由になれることも知った。
悲しみは悲しみで止めてはいけない。
そこから解放される事はないかもしれないが、自由になることは出来る。
熊木さんの歌声は、僕の遠い記憶から、音楽の国に帰れるパスポートを届けてくれた。
何も気張らず、何も気負わず、ただ純粋に音楽が好きなんだと思ってピアノを弾く事を思い出させてくれた。

僕は何をしていたのだろう。

ここまで、何の旅をしてきたのだろう。
ただ走って走って、走ってここまで来たら、何のために走ったか分からなくなっていた。
でも、今まで走り続けていたから、もう走りを止める訳にもいかず、
ただぜえぜえと息を上がらせながら今も走り続けている。
何を求めて走っていたのか、何が僕を走らせていたのか。
僕は何をやっていたのだろう。
道の後ろを振り返ってみる。
もう、戻れないかな。
もう、走りすぎたかな。
この道を戻れば、僕の落としてきた宝物はどこかに今も落ちているのだろうか。
それとも、後からきた車だか人だかによってぐちゃぐちゃに踏まれているかな。
僕は立ち止まった。
後ろを振り返り、前をもう一度見てみる。
道は無数に別れている。
僕は道を選びもせず、ただ走り続けていただけなんだ。
だから、真っ直ぐ進んでいなかったのかもしれない。
右に右に、左に左に進んでいただけで、僕はずっと同じ所を回っていたのかもしれない。
馬鹿だよな。
本当に。
「馬鹿だよ。本当に」
いつの間にか、誰かが横に立っている。
右を向く。
左を向く。
誰もいない。
いや、左に誰かいた気が…。下だった。
背の小さい子供が僕の左側に立って僕を見上げながら離していた。
「馬鹿だよ。本当に」と言ったその子は、小学生の頃の僕だった。
その子は優しく微笑んでいた。
「真っ直ぐ走ってると思って、必死に走り続けてきたのに、ただ回ってただけなんてさ、ほんと、馬鹿だよなぁ」
「こんな大人になるのか僕は」
子供の頃の僕は残念そうに言った。
「でもね」と子供の頃の僕は言った。「まだ遅くないよ」
そう告げて子供の頃の僕は地面を指指して去っていった。
僕はハッとして足下を見た。
僕は何かを踏んでいた。
それは木で出来た古い汚い箱だった。
洞窟に眠っている宝箱のように見えた。
僕はそのたがを外し、中を恐る恐る見てみた。

オルゴールだった。

オルゴールはねじが巻かれておらず、音が出なくなっていた。
僕はねじを巻いた。
でも、硬くてねじは微動だにしなかった。
僕は頑張ってねじを巻こうと努力した。
手から血が出てきた。
爪が少し欠けた。
痛みが僕を滅入らせたが、僕は引き続き力を入れた。
すると、やっとかたかたと音をたててねじは巻かれ始めた。
一度巻かれ始めると、もう後は殆ど力を要さなかった。
完全に巻ききると、オルゴールは止まっていた流れの続きを奏で始めた。
「天国はまだ遠く」で録音した曲とエンディングテーマの「こと」が流れた。
オルゴールなのに、音はそのままの音だった。
サウンドトラックを聴いているかのようだった。
熊木さんの「こと」ではちゃんと熊木さんの歌声が聞こえた。
僕のピアノも、聞こえた。
ピアノはちゃんと鳴っていた。
渡辺俊幸さんの曲では孤独な美しい響きを奏でていた。
熊木杏里さんとの曲では彼女自身が作ったメロディを邪魔しないように、静かに見守っている音がした。
「あぁ、僕は本当に馬鹿だ」
音はいつも僕の隣にいたんだ。
僕が気付いてあげられなかっただけで、僕の足下にあったんだ。
走りすぎたなんて僕のおごりだった。
僕が走っていたのはずっと同じ場所だったんだ。
何も変わらない。
昔の僕と、何も変わらない。
僕はずっとここにいたし、これからもここにいる。
音が僕と共にいてくれる限り、僕は自分を見失わないでいられるんだ。
もう、戻れないのかと思った。
音が僕の体内を満たしていたあの頃に、もう戻れないのかと思っていた。
でも、大きな間違いだった。
音楽は、いつでも人の体内で愛を奏でてくれている。
人は、人の形をした、音楽なんだ。

答えは、ピアノだった。

それ以外の何者でもなかった。
僕の体はピアノと繋がっていて、いつでも音が鳴らせる。
あのオルゴールは、ピアノだったのだろう。
僕は音を探して、ピアノを弾く事を疎かにしていた。
そうだ、僕にはピアノがある。
それが、答えだ。
その向こう側には何もない。
そこが、もう、答えだった。
僕はずっとピアノの向こう側を見ていたんだ。
ごめんよ。僕が間違えていた。君の大切さを見失っていた。
熊木さんの「こと」のPVを海で撮影した。
「天国はまだ遠く」の長澤さんが監督としてリードしてくれた。
僕はピアノを鳴らしてみる。
音はしない。
でも、もう何も怖くない。
僕の前にはピアノがある。
これが答えだ。
僕は焦らず、聞こえない音に聞き入った。
「こと」の前奏を弾く。
熊木さんの歌が入ってくる。
彼女は悪戯に砂浜に出てきた海の妖精のようだった。
僕はその歌声を支えられて幸せだと思う。
この曲、この映画に囲まれて、幸せだと強く思う。
もう、何も要らない。
なにもいらない。
僕は優しく撫でるように鍵盤に指を滑らせる。
彼女は僕に後ろ姿を向けて、海に向かって歌い続けている。
僕は目を瞑り、じっと風の中に消えていく歌声を聞く。
風が歌っているようだった。
空気が僕たちを音楽と共に包んでいるようだった。
戯れているようだった。
こうして僕たちは「こと」を、歌い、奏で終えた。
僕は笑いながら熊木さんに何かを言おうとした。
「楽しかった」だとか「幸せだった」だとか、そんな陳腐な事を言おうとした。
熊木さんは後ろ姿を引き続き僕に見せている。
歌い終えたのに、彼女は何も反応しない。
僕は怖かった。不安だった。
彼女にとっては当たり前のPV撮影で、当たり前の仕事なのかと思った。
もしその温度差があるとしたら、僕はまた音を失ってしまうような気がした。
やっと僕の答えが出たというのに。
彼女は風と同じ方向に少し傾いた。
その表情は穏やかだった。
髪が風の象徴のように空中で浮遊して、彼女はひっそりと波との会話を楽しんでいるようだった。
一瞬、彼女の瞳から涙がこぼれたような気がした。
すっとそれを指先でぬぐってしまったが、それは宝石のような輝きだった。
僕は何も言えなかった。
ただ、その音楽的な光景を、じっと見つめている事しか出来なかった。

人は、やっぱり音楽だった。
生きながらにして、音を奏でている。

僕は恐る恐る人差し指だけで鍵盤に触れてみた。
あと数センチ動かせば音が鳴る。
体が震えた。
僕の人生がここに集まっている気がした。
今までの事を思いだしてみた。
僕が当たり前のようにピアノを弾いていた少年時代から、留学に行った事まで。
いま、僕はピアノを弾く。
いま、再び僕に音が届く。
大切な物は、大切だと思わなくては大切な物ではない。
本当に大切だと思うという事は、好きで好きで、愛しくて、涙が出るほどかけがえのない事だ。
僕の体内で悲しみや切なさにも似たエネルギーが爆発しそうになる。
この一音に、全てをかける。
そうやってここまで歩いてきたんだ。
そうだった。
僕は、この、ピアノという楽器が、大好きだ。

波を打てない湖に、白鳥が一羽やってきた。
白鳥は湖の真ん中に降り立ち、水に波紋を起こした。
止まっていた時間が再び動き始める。
凍っていた生命が再び波打つ。
静かな湖に、また一匹また一匹と白鳥がやってくる。
春がくる。
花が咲く。
夏がくる。
虫たちが合唱を始める。
秋がくる。
鮮やかな色がつく。キンモクセイの香りがする。
冬がくる。
雪化粧をして、湖は新たな生命の誕生に準備する。

小さい頃の僕。

いま僕はこうして生きています。
そこにピアノはあるかい？
時には親密すぎて見失う事もあるけれど、それはずっと僕たちの体内に眠っているから、心配しないで。
天国はまだ遠い。
先はまだまだある。
そんな中で、人ひとりの力がたとえあまりにも小さなものだとしても、
生きるという事は、音を鳴らすということです。
人は音楽だったのです。
答えはいつもすぐそこに。
そして、宝物はいつも足下に。
迷うことも、道を誤ることも、無駄にはならなかった。

「強くあるなら、弱くあること」
今思うと、「こと」の中でこの歌詞のフレーズに力を入れた和音を弾いた事は、偶然ではなかったのだと思う。
僕の答えは、最初から最後まで、「ピアノを弾くこと」にあった。

      
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   <title>雨だれ</title>
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   <published>2008-10-01T17:26:31Z</published>
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      <name>清塚信也</name>
      
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      ￼暗闇というよりは紺闇といった方が正しいだろう。
それは僕の閉じ込められている部屋の壁が紺色だからだ。
石造りの煉瓦で紺色をしているその壁が、闇夜に浮かぶ満月の光を物悲しく反射させている。
その部屋はとても高い塔の最上階にあった。
窓は、手の届かないくらい高いところに一つだけ、
真四角で子供が１人入るかどうかくらいの大きさの物があった。
その窓には二つ鉄の柵が掛かっていて、僕を閉じ込めるための絶対的に優位な力を示していた。
部屋には黄土色の小さな椅子と机があった。
赤い表紙のラテン語で書かれた本が一冊、その机の上に無造作に置いてあった。
僕の閉じ込められている塔は、中世ヨーロッパのお城にあった塔のような円柱型だった。
時折、部屋の窓の鉄柵に強い風が当たるとぴゅうぴゅう音がする。
僕はただその音を部屋の片隅で聴いていた。
この部屋で僕に与えられた光は、か細いロウソクだけだった。
ロウソクの火は僕に何かを訴えかけようとしているかのように表情豊かに右に左に無造作な動きを続けていた。
僕は椅子に座ってみた。
そして読めもしない本をパラパラとめくってみた。
色んな記号が紙の上に敷き詰められていた。
これだけある記号の一つだけでも欠けてしまってはいけないのだ。
小さな存在ではあるけれど、確かにいなくてはいけない存在。
僕は本を閉じて目を閉じてみた。
いつの間にか外では雨が降り出している。
大降りではないが、一滴がずっしりと重い。
僕は僕の存在を信じるために、唯一の光だったロウソクを一気に吹き消してみた。
僕は生きている。
だから火を消すことも出来る。
僕は、確かに、生きている。
でも、僕は閉じ込められている。
僕という存在に。
君という存在に。
僕のいる部屋は外側からしか開かないしくみになっている。
だから、君が迎えに来てくれなくては、僕は一生ここから出る事は出来ない。
呪いとも、宿命とも、象徴ともいえる。
これが、愛だ。
誰も知らない忘れ去られた塔の最上階の部屋で、
ただ独り閉じ込められているこの状況こそが、愛を表している。
僕は信じていた。
君が迎えに来る事を、ずっと信じていた。
しかし、さっきロウソクの火を消し去ったときに、その自信も一緒に消えてしまった。
君は来ない。
雨の音はたんたんとしたリズムを刻み続けている。
風が鉄柵に当たってぴゅうぴゅうと鳴いている。
僕は孤独なのだ。
死よりも遙かに罪深い孤独という悪魔に取り憑かれてしまった。
ロウソクの灯りがない、紺色の闇に包まれた冷たい石の壁は、僕から生命力を奪った。
そして、僕の人生からカラーを奪った。
全てが紺色になってしまった。
月明かりも、もう無い。
風の音は呪われた亡霊の脅迫に聞こえ、
一定のテンポで刻み続ける雨音は僕を追いかける悪魔の足音に聞こえた。
らせん階段の一番下の方から、何かが上がってくる足音がする。
雨音と妙にマッチしていて、それは恐怖というより不安というより、虚しさを表しているように感じた。
僕は塔の最上階の部屋に身動き一つ出来ずに閉じ込められている。
悪魔は雨音と同じテンポで塔のらせん階段を上がってきている。
ゆっくりと、ゆっくりと、しかし確実に。
僕は君を思い出す。
死に対して無抵抗で無防備なまま、君を思い出すこと以外に何も出来ない。
美しい君。あの、光り輝く太陽に水面が反射するような煌びやかな笑顔。
それは聖なる光を浴びて力づいた天使以外の何者でもなかった。
手を伸ばせば君の髪に触れられるような気がした。
目を閉じて、君を思い出しながら、僕は手を伸ばした。
しかし、その先には冷たい石造りの壁しかなかった。
そのごつごつざらざらとした邪悪な肌に触った瞬間、僕の中にある君のイメージが一瞬にして壊れた。
君の笑顔が傷一つ無いガラスに大きな石を投げた時のように砕け散る。
君の笑顔は４つくらいに大きく割れて、それぞれの割れ目から真っ赤な血が噴き出した。
僕はそのイメージに耐えられなかった。
目を開けると、らせん階段を上がる足音はもうそこまで来ていた。
あと少し。
あと少しだけ耐えれば、死がやってくる。
不安や恐怖への障壁は僕自身が創り出しているものだ。
僕は覚悟を決めた。
扉をじっと見る。
取っ手がゆっくりと下がる。
ついに悪魔が僕の部屋に入ってくる。
人生が走馬燈のように駆けめぐる。
思い出がバッハの大フーガの最後のストレッタかのように、僕の頭をドゥックスとコメスが追走する。
僕はもう一度目を閉じ、壁にもたれ掛かり、両手を前につきだして、ピアノを弾いている真似をした。
ほら、そこには音がある。
思った通りだ。
音は僕の中に生きていた。
いつでも傍にいてくれていたのだ。
ピアノが無くても、僕には音が出せる。
右の小指、次に人差し指、そして親指、ゆっくりと丁寧に動かしてみる。
ファ、レ、ラ。
確かに、今、ピアノの音が鳴った。
F　D♭　A♭
ショパンのプレリュード「雨だれ」。
そうだ、この曲のメロディは死を覚悟したときの、安らかな気持ちなんだ。
それは、死への不安と恐怖を受け入れ、
それを自分のものにしたときにだけ一瞬現れる、砂漠のオアシスのような安堵だ。
中間部は力強く、しかし丁寧に、けして急いではいけない。
先に進むのではなく、来るものを拒まないような淡々としたリズム。
僕自身が動いてはいけない。
死のように向こうから近づいてくるのを待つのだ。
ただひたすら待っていれば、らせん階段を上がってくるときのように、一歩一歩ゆっくりと確実に近づいてくる。
それに怯えてはいけない。
その一つずつの音を音楽にして浄化するのだ。
僕は雨だれを丸々一曲弾ききった。
僕は笑った。
最高の君の笑顔を真似て、笑ってみた。

涙が出てきた。

笑うと涙が出るという現象を初めて知った。
もういい。
君は来なかった。
でも、僕はずっと、待ち続ける事が出来た。
涙は一滴だけ落ちて止まってしまった。
僕はその涙をお別れの挨拶のように感じる事が出来た。
死が、そこに立っている。
僕は目を開ける。
ゆっくりと、フェードインしてくるように。
雨音が遠くなり、やがて消えた。
雨が止んだ。
風はもう僕に向かって来ない。
ぴゅうぴゅうと、亡霊の脅迫を乗せて、僕を責めては来ない。
ドアの前には、君が立っている。
僕はもう一度涙を流す。
君がそこに立っている。
僕はまた涙を流す。
ただそれを繰り返す。
そして、君は僕を抱きしめてくれる。
君はそのとき、僕の耳元で、「ごめん」ではなく「ありがとう」と言った。
僕はその言葉に救われる。
君は僕を強く抱きしめる。
そして、僕は幸せを象徴する笑顔を浮かべる。
その笑顔は穏やかさを司っていた。
１００年ぶりくらいにこの部屋に太陽の明かりが差し込んだ。
夜が明けた。
君は僕を待たせた。
でも、僕は何も恨んではいない。
君を待つ時間も、君が現れた時間も、とても綺麗な時間だった。
君は僕に時間の美しさを教えてくれたのだ。
ありがとうと僕は君にそっと告げる。
君にその言葉がちゃんと聞こえたかどうかは分からない。
君は僕の手を取って共に立ち上がり、ロウソクの方へ歩いて行って、優しく火を灯した。
もう、夜は怖くない。
灯りが戻ったから。
君が来てくれたから。
僕らはここで暮らす。
でも、もう閉じ込められているのではない。
紺色の闇は、月明かりをよりいっそう美しいものにしてくれる。
風の音は僕らのハーモニーを装飾してくれる。
ときおり降る雨は、二人を幻想的なパーティに招いてくれる。
全てが、変わった。
それが、愛だった。
それが、君だった。

僕は、そうやって、死を迎えた。

完

      
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