清塚信也 OFFICIAL BLOG: DIARY

DIARY

2008.04.05

ライオンの手紙2

その次の日はライオンは僕の夢に出てこなかった。
その次の日もライオンは僕の夢には出てこなかった。
もう出てこなくなったのかと、少しだけ僕は残念に思った。
ライオンに会いたいというよりかは、彼の話の続きが知りたかったのだ。
そして次の日の夢のこと、、、
ライオンから手紙が届いた。

僕は急いで封を切る。

 前略
突然あなたさまの夢に登場してしまい、失礼しました。
そして、何も言わずに夢に出なくなった事も、申し訳ないと思っております。
何だかやっぱり弱音を吐くのが辛くて、誠に勝手にも、もうあなたさまの夢には登場すまいと決心していたのですが、あなたさまがわたしの話の続きを聞きたいと強く思ってくれたのが伝わったので、やはり最後までお話しようと思いました。
いつも身勝手な登場の仕方で本当にごめんなさい。

ここでライオンの手紙は1ページ目の余白を沢山残してページをめくるようになっていた。

わたしは、ライオンではないのです。
いえ、正確に言うと、ライオンという動物はこの世にはいないのです。
あれは、わたし達の一種のカモフラージュで、本当は化けの皮を剥ぐと、とても弱々しいちっちゃな存在なのです。
勿論、本当に体の皮が剥がれてその下からちっちゃなミニチュアライオンが飛び出てくるというような、そんな安っぽい事じゃないです。
あなたさまなら、そこら辺を理解してくれますよね?
話を戻します。
でも、世間ではわたし達の事をひゃくじゅ…ひゃくじ…ひゃく…と呼びます。
(どうやらひゃくじゅうの王というのが書けなかったらしい)
わたし達は、実は、他の方々を喜ばせたりする事で生きながらえます。
実は、エサなんて必要なくて、誰かがどこかで喜ぶ気持ちがわたし達のご飯なのです。
だから、みんなを喜ばせたい。
そして、わたし達が人様に出来る事と言えば、勇ましい姿を見せつける事なのです。
一見矛盾してますが、そうなのです。
これは長年わたし達の先祖が研究し続け出した答えなのです。
ライオンという、創られた概念に沿って生き続ける事が、皆様への期待に応えるという事なのです。
でも、わたしはライオンの中でも弱々しい存在で、この現実に耐えられなくなってしまいました。
自分を偽る事に疲れ果てたのです。
だから、本当の事を言いたくて、友達を探していたのです。
本当の事を話したら、少しは気が晴れるかと思って…

それで、あなたさまの夢に登場したというわけです。
結局、直接お話しする勇気は無かったですが、こうやってあなたさまにお話を聞いてもらえて、よかったです。
これでまた明日から頑張れます。
本当にありがとうございました。

それ以来一度もライオンは夢に現れなかった。
本当は自分が弱いこと、ライオンですらないこと、それを言えた彼の勇気にとりあえずは拍手を送りたい。

ライオンの手紙には、続きがあった。
続きは、別の紙に書いてあった。


つづく

2008.04.04

ライオンの手紙1

「次の夢でちゃんとしたお話をしますから」
僕の夢に突然現れたライオンは言った。
言い終えると僕の夢は煙のようにどこかへ行ってしまった。
何が何かわからなかったが、
「次の夢でちゃんと話をする」という言葉だけが妙に僕の心に残っていた。

次の日の夢でちゃんとライオンは現れた。
名を名乗ろうかと提案してきたが、僕は断った。
何か、このライオンとこれ以上親しくならない方が良い気がしたからだ。
「そうですか…」とライオンは残念そうに言った。
しばしの沈黙の後、僕はライオンに尋ねた。
「それで、僕に何か用ですか?」
「ええ、用です」とライオンは言った。
また暫くの沈黙が訪れた。
僕は段々と苛々してきたが、相手が強そうなライオンなので、黙っている他なかった。

ライオンはまた次の夢にもやってきた。
「実は、お話をきいてもらいたいのです」
ライオンは申し訳なさそうにそう言った。
「わたしは、ご存じ、ライオンです。百獣の王です」
というところまで喋った後でライオンはむせた。
とても苦しそうにしていて、何かを振り払うかのように前足を使って空を切っていた。
「結論から言いますと…わたしは百獣の王ではないのです。本当はとても弱いのです」
ほう、と僕は言った。
ライオンはまたむせている。
「それはね、力は他の動物より少しだけ強いかもしれまでんが、精神的にはとても弱いのです。だから、百獣の王などと言われると…」
喋っている途中でライオンはまたむせはじめた。
相変わらず前足で自分の顔の前をひっかくようにしていて、太い腕が空を切る度にブンブンという音が鳴った。
僕は何故か電線に風が当たってびゅーびゅーと鳴っているのを思い出した。
「大丈夫ですか?お茶でも飲みますか?」
僕が訊くと、ライオンはとても申し訳なさそうに体を縮めて、いえいえと遠慮した。
「百獣の王という言葉を聴くと、何か心因的な作用でむせかえってしまうのですね」
僕がカウンセラー気取りで言うと、ライオンは少しだけ頷いた。
「正確に言うと、自分で喋ると、という事です。その言葉を自分で喋ると、何かの力が働いてわたしの体を苦しめるのです。ほら、今あなたがその言葉を言ってもわたしは何ともありませんでしょう?」
確かに、ライオンは自分でその言葉を言わなければ大丈夫そうだった。

つづく

2008.04.01

ALIGATO

IMG_0912.JPG
【無題】


皆様に支えられてここまでブログを続けてこられました。
しかし、そんなブログも、今日限りで閉鎖しようと思います。
沢山の激励のお言葉の陰に、沢山の批難もありました。
今はその批難の方を心に受け止められる器がないのです。
それが閉鎖の理由です。
短い間でしたが、本当にありがとうございました。
僕が生み出した数々の言葉の塊は、この世に生まれてこれからどうやって育っていくのでしょうか。
僕は彼らの親なのに、まったく無責任だと思います。

と、いうのは嘘で、今日はエイプリルフールです。

これからも末永く、このブログ共々、よろしくお願い致します。
ここ何日か、あまりに多くの疲労とプレッシャーを感じたゆえ、少しばかり燃え尽き気味の僕です。
数日間、旅に出ようと思いたいのですが、まぁ、そうも行かないので、ひっそりと過ごそうと思います。
大変だったここ数日間、皆様からのげんきだまが無かったら、やりきれませんでした。
月並みな言い方ではございますが、

     本当にありがとうございました。

「もう二度と会えないような顔をするね」
と僕は昔からよく言われました。
遠くを見るような目をするのがいけないのでしょうね。
でも、ピアノとお客様がいるかぎり、僕はそこに現れます。
かっこつけてるなぁ、僕は今日も。

とにかく、ありがとうと、一言みんなに告げたかった今日のブログです。

本当に、ありがとう。

2008.03.26

げんきだま〜〜〜!

世の中には不条理な事もあるし、しょうがない事もある。
もう、誰にもそうなる事を止められなかったという様な事だ。
誰が悪いわけでもない、でも、誰かが責められたり責任をとる事になる。

それは、それこそ「仕方のない事」だけれど、そんな時はホントにきついよね。

僕は今ちょっとそんな感じに陥ってます。
ということで、僕に元気を分けてくれる方大募集。
前回と矛盾するけれど、今は心からあふれ出る「頑張って」の言葉が欲しい。

あぁ、僕ってずるい奴だ。

悟空みたいに強くなりたい。

2008.03.24

操りピアニスト

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【渡辺俊幸さんとレコーディング終了後の安堵の表情^^】


「力抜きなさいよ」
そう言われて僕はハッとした。
しかし、
一瞬驚いた後で、すぐに怒りにも似た感情がメラメラとわき上がってくるのが分かった。
そんな事分かってる。
自分で分かってる事を人から指摘される事ほど面白くない事はない。
僕は、自分自身が肩に力を入れて生きている事を、よく分かっていた。
それだけに、それを指摘されてイラっときたのだ。

世の中には、心に筋が通っていない人がいる。

筋が通っていないから、自分で力を入れておかないと、
糸の切れた操り人形みたいになってしまうのだ。
一度でも力を抜いたら、もう元に戻れないのではないか、という不安。
いつかは力を抜けると思って、今日と明日を息苦しくも頑張って生きる。

だから、自分でよく分かってる。

「力抜きなさいよ」
「泣くなよ」
「頑張れ」
元気づけるための言葉は、時に鋭利な刃物のように心に突き刺さる。
OK,僕は確かにクヨクヨした男さ。
でも、人を愛する事は出来る。
それが、生きるって事だ。


今日は渡辺俊幸さんの作曲なさった曲を、映画のためにレコーディングしてきました。
映画の情報は解禁しているのかな?
感傷的な気持ちに雨が加わって、今日はちゃんと弾けるか緊張しました。
でも、渡辺俊幸さんの曲は、そんな僕の凝り固まった心に、とても効きました。
自分で弾きながら、気持ちを込めて、込めて、込めて…

     僕の気持ちが伝わって欲しいんだ

と気持ちを込めて、込めて、込めていたら、涙が出そうで、でもそれを堪えて、
一生懸命鍵盤に注ぎ込みました。
力を入れてないと生きていけない人に、是非届いて欲しい曲ばかりです。

                               映画、観てね。

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