人の誇り
孤高の鳥、白鳥です。
夕ご飯を食べに行く途中、ちょっと考え事をして湖の畔に立ち止まると、
向こうからスっと近寄ってきました。
見れば見るほど不思議な鳥です。
動物は危険な土地に生きていると、その土地柄の色に変色していくといいます。
ジャングルなどで生活する動物は兵隊さんの迷彩のようにカモフラージュされています。
色の主張が強い動物は「危険色」という意味合いであり、大体毒や武器を持っています。
しかし、この白鳥たちは、夜の漆黒の中に「純白」です。
その平和な主張が、なんとも誇り高さを感じさせます。
どんなときも誇りを忘れない。
僕も、そんな音楽家になりたいな。
バーンスタインは、危険な戦地に赴いてコンサートを開きました。
周りからの大反対も相手にせず、自分の音楽家としての誇りを最後まで貫いた。
怖いと思っても、不安を感じても、「ここで引き下がれない」という誇りを捨てないこと。
それが僕の一つの理想です。
漆黒の湖に浮かぶ、孤高な白鳥のように、僕は生きてゆきたい。
本当は勇気もなくて弱くて、独りでは何も出来ないくせに、
「僕には守るべきものがあるんだ」
と強く言える芸術家になりたいです。
妥協せずに思いやりを持って、美しいものを愛し悪を憎む。
そして、誇りを忘れない。
これが芸術家なのではないでしょうか。
いや、これが、人間なのではないのでしょうか。
今頃、湖では密かに白鳥がくしゃみをしているに違いありません。笑