清塚信也 OFFICIAL BLOG: DIARY

DIARY

2007.09.09

ニホンのブンカ

今日は日曜日。お稽古はお休みです。
今夜、今度僕たちの「テンペスト」をする劇場で、
演出家のクリスティーナさんとオペラを観てきます。
モーツァルトらしいです。
楽しみだなぁ。

ところで、妖精アリエルの歌ですが、殆ど完成しました。
こちらでの本番ということもあって、なんと、「日本語」の歌詞にしました!
きっと、
漂うような日本語の歌詞に、こちらの方たちは「妖精の言葉」を聞き取る事でしょう。
和声にも少し日本テイストを入れようと思っていて、完成が楽しみです。
美しく漂うように、そして、どこか恐ろしく物悲しいところがある。
日本の文化には、そんな魅力があると思います。
そして、嵐といえば、嵐の前の静けさ。
嵐の直前が静かだからこそ、嵐の暴れ具合がよく解ります。
そんな「不気味な静けさ」も、日本の文化にはある気がしました…。

2007.09.08

人生の選択

人生は選択肢の連続だ。

時差ボケか、ハードなお稽古のせいか、今までの人生でも数える程しかしたことのない
「昼寝」をしてしまった。
昼寝といっても、もう18時を過ぎていたから、「夕寝」といったところか。
ただでさえあまり長く眠れる体質じゃないから、当然22時頃には目がぱっちりと覚めて、
長い夜をどう過ごすかに悩まされることとなった。
日本のニュースをネットで読んでみたり、作曲の和声進行を考えてみたり、
友人にメールしてみたり、洋服をたたんでみたり、散歩してみたり、、
そんな風に夜の時間を潰して、やっと朝を迎えられた。
皆の目覚めを祝っているかのような朝日のファンファーレ。
窓をそっとあけてみると、河の方から新鮮な空気が流れ込んできた。
闇夜が嘘のように感じ、土曜の聖なる朝が来たのだと実感する。
5感が蘇ってくると、お腹がすいてきた。
さて、何を食べようか。
湖の畔で少し早いお茶をしながら、ゆっくり考えるとしよう。
そうと決まると、なぜだか心の中が忙しくなる。
早くシャワーに入って、支度しなきゃ、せっかくの「早いお茶」が出来なくなる。
土曜なんだから、少しはゆっくりすればいいのに…。
自分に苦笑いだ。

シャワーから出て、開けっ放しにしていた窓から流れ込む朝の新鮮な空気を肌で感じ、
まずは、何を着ていこうか選択する。

>コートは、白か黒か…。  よし、今日は黒にしよう。
>お次は香水とサングラス…。  うーん、爽やかな香りにレイバンのサングラスだな。

そして、アパートから出てきて、早速迷う。

>どの道を行こうか、河沿い?中央…?  よし、帰りに河沿いを歩くから今は中央だ。
>サングラスをかけようか、それとも爽やかな朝日を眩しく受け止めようか…。
               今日は少し眩しくても、自然な視力で朝日を感じよう!

何とも贅沢な選択肢ばかりだ。
人生の極上のスパイス。それは素敵な選択肢だと思う。
ただ生きているのではなくて、自分が自分の意志によって「選択」するという美しさ。
「人間は考える葦である」「我、思うゆえに我あり」
両方ともその通りだと思った。
葦のように、風が吹いただけでも死んでしまうくらい弱い生き物、人間。
でも、考えることで強く生き抜く事が出来る。
ただ生まれただけじゃなくて、自分が自分だと認識する事によって、初めて生まれる人間。
プライドや意地も、必要かもしれないな。
どんなに格好悪くても、どんなに迷惑でも、自己中な人間がちょっとかわいく見えてきた。
「自分を主張できない人より、自己中くらいの方が、かわいいかもな。」
そんな事を歩きながら呟いてみる。
僕の呟いたのが「挨拶」に思えたのか、
すれ違ったおじいちゃんが、優しい笑顔を見せながら「ハロー」と言ってくれた。
おじいちゃんとおばあちゃん。
二人とも80歳近くいってるだろうか、仲良く手をつないで朝の散歩を楽しんでいる。
おじいちゃんからは、すれ違ったとき柑橘系の甘酸っぱいコロンの香りがした。
ジョンレノンのようなサングラスをかけて紳士帽を深くかぶって、格好いいおじいちゃん。
僕もあんなおじいちゃんになりたいなぁ。

…と、先方を見てみると、朝市が開かれている。
まだ朝なのに、すごい人だ。
これが東京なら、間違いなく人混みはさける。
でも、、、ここでなら何のストレスにもならない。
よし、おもいきってあの人混みに飛び込むぞ!
朝市には様々な品物があった。
右に左に、首をくるくる回しながら、自分が毛繕いをする白鳥になった気分。

>右にはチョコレート屋、左にはチーズ屋…。   うーん、チーズかな!

珍しいチーズがたくさん並んでいた。
じっと見ていると、お店のお姉さんが一切れ食べさせてくれた。
なんてまろやかな味だろう。
朝の新鮮な空気との組み合わせは、
朝食のクロワッサンとエスプレッソの組み合わせを勝った。
「とてもいい味だ!」と言ったら、嬉しそうな顔をして次々に色々な味を試させてくれた。
結局7枚もただで食べさせてくれた。

>しばらくこの味を口に含んでおこうか、それともお茶しにいこうか…。

僕は、結局お茶するのをやめて、湖の白鳥をしばらく眺めていることにした。
口の中にはチーズの香りがいっぱい。
7種類食べたチーズの、どの味をフォーカスしようかを考えてるだけで幸せになった。
湖の静かな風を感じながら、目を瞑ってその音を感じてみる。
そういえば、神童のワオも、こんな事してたっけ。
風が体中を巡っているように感じる。
ふと、さっきのおじいちゃんの事を思い出してみた。
生まれてから今までの人生、あのおじいちゃんにはどんな出来事があっただろう。
色々な苦しみ、色々な喜びがあっただろうな。
彼も、今の僕と同じく、人生の選択を幾度となくしてきたに違いない。
ベートーヴェンのように、
「死んでしまおうか」と思うほどの辛い出来事もあったかもしれない。
そして、その考えを覆す程の喜びも感じたかもしれない。
もしかしたら、もっと平凡な人生だったかな?
どちらにしても、彼は、「生きる」という選択肢をずっとしてきた。
そんな彼の人生で、一瞬だけど、ほんの一瞬だけど、僕はすれ違う事が出来た。
そして、「ハロー」と笑いかけることも出来た。

…なんだか、とても暖かい気持ちになってきた。
うん、今のこの気持ち、美しい音楽を体内に取り込んで、その温もりに浸っている時の感覚
と同じだ。
この気持ちなら、どんな悪事でも抱きしめる事が出来そう。
宮本武蔵が言っていた「水の心」とはこんな状態のことかもしれないな。

気持ちよくなって、そろそろ動き出したくなった。
そっと目を開いてみる。
目の前に広がる湖。
ゆっくりと深呼吸して、さっきより高く上がった太陽を見てみる。
眩しい。すごく眩しい。
でも、気持ちいい。
胸元でサングラスが反射している。
「そうだ。僕はいつも心の目にまでサングラスをかけてしまっているな。」
そう感じた。
どんな形の器にも適応する柔らかい水。
そんな心をいつも持っていたい。
そして、心のサングラスを胸元にかけて、美しい空気の温もりを感じながら、
自分の良心と、自分の考えに背かない、「美しい人生の選択」をしていきたい。

ピアノよりも大切なもの。
自分の命より大切なもの。
愛する人、愛する音。
人生は選択肢の連続だ。
そのどれもが、自分次第で輝く。
そこには間違った答えなんかない。
迷ったって、困ったっていい。
それが、僕らの純粋な考えであれば。
それが、僕らの生きている証拠となれば。
人間は、考えているから美しいんだ。
あなたは、考えているから、そこにいる。

少しクサすぎるぞ、僕。
これじゃあまた「ナルシスト」呼ばわりだな。
はにかむように自分を鼻で笑って、僕は勢いよく湖から歩き出した。

      「さぁ、朝食は何を食べよう…?」

そう。
いつまでも僕の「選択肢」は終わらない。

>そろそろチーズも口からいなくなったし、お茶しに行こうか?それとも…?

湖を後にするとき、ふと、白鳥が、どっちに泳いで行こうか一瞬迷っているようにみえた。
「お前も、迷ってるのか」
もう一度、今度は白鳥に、はにかんでみるのだった。

DIARY〜真夜中の独白〜

なかなか寝付けない夜を利用して、少しだけ日本の事を考えてみる。
もうすぐ秋を実感し始める頃だろうか。
僕は、秋になると、すぐハローウィンとクリスマスが待ちきれなくなる。
ハローウィンにはいつも「ディズニーランド行きたいなー」って思う。
クリスマスにはいつも「表参道行きたいなー」って思う。
ホーンテッドマンションや表参道のキラキラしたライティングが僕は大好きだ。
でも、あの光って結構電力の無駄遣いって言われてる。
資源の無駄遣いは、問題だなぁ。
ブッシュさんがAPECをOPECって言い間違えたらしいけど、洒落になってません…。

ファイナルファンタジーⅦでは、世界の「油」に対する使いすぎ警告みたいなメッセージ性
を感じたけど、世界は正ににそんな話になってきてしまったなぁ。
地球のエネルギー…あぁ、僕も節約しなきゃね…。
ゲームついでに言うと、キングダムハーツ。このゲームは本当にお気に入り。
ディズニーとFFとのコラボなんですが、あの世界観はたまらなくメルヘン。笑
特に1を初めてやっときには、感動したな〜〜。
あんな世界に入り込んでみたーい!と思うのは僕だけでしょうか…。
あ、でも、ルツェルンにいるんだから、割と近いものがあるかな☆
ようし、明日からまた頑張るぞ〜、と思ったら、明日は土曜日で稽古お休みだ。
チューリッヒにでも行ってみるかなぁ〜。

…と、日本のことを考えるのはどこへやら。笑
まったく、僕の頭はどうなっているんだろう。
一つのものをじっと考えていられたことが、殆ど記憶にないな。
いつも脱線脱線の繰り返し。
まぁ、でも、13日にはまた日本に帰れるし、いっか。(^_^)b
それにしても、何度乗っても、パイロットに憧れるな〜。
子供の頃から、パイロットとお医者さんに死ぬほど憧れたからな〜。
後、あの成田の雰囲気、ほんとにいいな〜、何度行っても、あそこはいいな〜。
出逢いと別れが交差してる、不思議な空間です。
どの空港より、僕は成田が好きっ!
成田が好きだーーーーーー!!!

2007.09.07

ミュージック from  ヘヴン

「天国からの音楽なの。あなたには出来るわね。」

そういって、クリスティーナさんは僕に作曲を促した。
アリエルが、ファーディナンドというミラノの王子を助ける時の歌だ。

テンペストの主役はプロスペローという初老の男。
彼は元ミラノ大公であり、魔法使いでもある。
しかし、実の弟の悪巧みによりその座を追われ、ついには娘と共に国を追放となる。
そのプロスペローが、実の弟を含む、
自分の後任のミラノ大公一行が乗る船を難破させるところから、この物語は始まる。
彼が魔法によって、テンペスト(嵐)を起こすのだ。
船の難破を目の前に、死ぬかもしれないという恐怖からパニックを起こす一行。
それをみて「復習の始まりだ」と確信するプロスペロー。
しかし、
プロスペローの目的は、自分の娘ミランダと、現ミラノ大公の王子ファーディナンドとを
結婚させて、自分がミラノに戻って権力を取り戻す事。
復習といっても、皆に死を与えようというのではない。
なので、冒頭の嵐では、誰一人死者はでない。
しかし、みんなバラバラになってしまう。

沖に流されて気を失っているファーディナンド。
気がつくと、独りだけ無人島のような島に漂着している。
そこで、自分以外の人間が全て死んでしまったと勘違いし、絶望の淵にたたされる。
それを、優しく慰めてくれるのが、プロスペローの手下であり聖なる妖精であるアリエル。

その時の、慰めの歌を、今日は作曲しました。
この歌で、父親の死や仲間の死を乗り越えるファーディナンド。
その勇ましい姿を見て一目惚れしてしまう自分の娘ミランダ。
やがて二人は恋仲に…。
と、これらはもちろんプロスペローの計画通り。
彼の復習劇の始まりなのです。
世界ではこのプロスペローのことを「傲慢」と批判したり、「賢者」と評したり、
その見解は色々です。
皆様にはプロスペローはどう映りますか?
今回の劇では、後者だと思います。
プロスペロー役の役者さんは、とても紳士で賢者のような雰囲気です。

さぁ、父親の死をも忘れさせるような、美しくも切ない歌を作らなくては。
「天国からの音楽なのよ。」
クリスティーナさんの言葉が僕の頭を駆けめぐる…

2007.09.06

愛おしいあなたへ

その霧の奥に隠れている密やかな吐息を、今度は僕のすぐ傍で感じさせておくれ。

…夜の暗がりから、段々と朝日が差し込んでくる。
霧が反射し、漆黒の闇は聖なる光の前に敗北しようとしている。
そして、あなたの陰は、遂に僕の足下まで伸びてきた。
そう、あなたに僕の手が届く時は近い。

もしこの手があなたの肩にかかったなら、僕はもう決して、この手を離さない。
今度こそ、僕のものにしてみせる。
あなたのその美しい姿は、湖に浮かぶ孤高な白鳥のよう。
あなたのその愛おしい声は、僕の耳をそっと撫でてゆく冷たい風のよう。
あぁ、どれだけ多くの夢を見ただろう。
それらの夢は、全てあなたの夢だ。

もし、あなたの腕の中で息が出来なくて死んでしまっても、僕は幸せだろう。
僕はこんなにあなたを欲しがっているのに、あなたはまだ僕のものにはならない。
後もう少し、もう少しであなたに手が届きそうだ。
あと少しだけ、手を伸ばしてみよう。
きっと、この手があなたを奪い去っていけると信じて。

さぁ、怖がらずに、さぁ。
僕の元に訪れておくれ。
きっと優しく奏でてあげるから。
そっと僕が勇気づけてあげるから。
エリアルのお歌。
僕に降りてきておくれ。

大丈夫だよ。
あなたのお歌の楽譜には、僕がこう注意書きしておくんだから。
           
              「秘密を話すように」 と。
          
スイスの湖のほとり、独り苦いエスプレッソを飲みながら、白鳥と一緒に作曲しています。
テンペストの狂乱を呼ぶ「エリアルのアリア」を書くには、
ここは少し幸福すぎる環境かもしれないな。
そろそろアパートへ帰って、孤独を感じながら、
本気で「あなた」を掴みにいくとしますか。
え?あなた?もちろん、それは、僕の中に眠る音楽の事です…

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