清塚信也 OFFICIAL BLOG

New Release

◎ 清塚信也「月刊ピアノ」6月号(5/20発売)より初の連載開始!
 月刊ピアノ<連載> 清塚信也のひとり旅エッセイ『ピアニストだからさ』
◎清塚信也 NEW ALBUM 発売決定!
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◎ 清塚信也 初の書籍「ショパンはポップスだ」発売中!
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◎ 清塚信也/コンサート&講座の最新詳細情報はこちら ▶ http://www.ravenjam.com/kiyozuka/concert/

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清塚信也/最新NEWSトピック
・2009年6月17日(水)@東京文化会館(小ホール)
 清塚信也 ピアノ・クロニクル 2009 〜Shinya Kiyozuka Piano Chronicle 2009〜
 お問合せ:ザックコーポレーション(03-5474-9999)
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・毎週土曜日深夜0:55放送/テレビ東京系「イツザイ」番組内ドラマ『学校の怖い話』の音楽を清塚信也が担当!
・7月4日(土)清塚信也/書籍「ショパンはポップスだ」発売記念コンサート@ヤマハ新居浜店
・7月5日(日)清塚信也/書籍「ショパンはポップスだ」発売記念コンサート@埼玉県 昭和楽器ミュージックポート川越
・7月7日(火)清塚信也プライベートコンサート「K's Salon Vol.2」@恵比寿 art cafe friends
・7月9日(木)清塚信也/書籍「ショパンはポップスだ」発売記念コンサート(2回公演)@エルム楽器 釧路支店
・7月15日(水)清塚信也/書籍「ショパンはポップスだ」発売記念コンサート@エルム楽器 札幌本社
・7月17日(金)清塚信也ピアノリサイタル@北九州市立「響ホール」
・7月20日(月)清塚信也/書籍「ショパンはポップスだ」発売記念コンサート@滋賀 イケダ光音堂
・7月25日(土)15時〜<完売御礼> Piano Trio 〜ピアノトリオ・コンサート〜 with 石田泰尚(Vn)金子鈴太郎(Vc)@横浜市栄区民文化センターリリス
・7月25日(土)19時〜<追加公演決定> Piano Trio 〜ピアノトリオ・コンサート〜 with 石田泰尚(Vn)金子鈴太郎(Vc)@横浜市栄区民文化センターリリス
・7月29日(水)スケート・ファンタジー IN SUMMER 2009@東京国際フォーラム(ホールA) with 青島広志、荒川静香ほか
・7月30日(目)清塚信也/書籍「ショパンはポップスだ」発売記念コンサート@群馬 ヤマハ桐生かさかけ店
・8月17日(月)清塚信也「夏休みピアノスペシャルコンサート ~絆(きずな)~」@横浜市フィリアホール
・8月23日(日)清塚信也「お話とピアノコンサート」@前橋市民文化会館/大ホール
・8月24日(月)清塚信也サマーコンサート2009@光が丘IMA
・8月30日(日)清塚信也ピアノ講座「ベートーヴェン/熱情、ほか有名ピアノ曲」@名古屋 第一楽器 植田店
・9月4日(金)NAOTO Reversible 2009 -Concert Side@いずみホール(大阪市)
・9月13日(日)清塚信也トーク&ピアノコンサート@神戸新聞松方ホール
・9月21日(月・祝)NAOTO Reversible 2009 -Concert Side@紀尾井ホール(東京都)
・9月22日(火・祝)NAOTO Reversible 2009 -Concert Side@紀尾井ホール(東京都)
・10月3日(土)5週連続コンサート「週刊!清塚信也」(第1回)@王子ホール(東京都)
・10月9日(金)5週連続コンサート「週刊!清塚信也」(第2回)@王子ホール(東京都)
・10月17日(土)5週連続コンサート「週刊!清塚信也」(第3回)@王子ホール(東京都)
・10月24日(土)5週連続コンサート「週刊!清塚信也」(第4回)@王子ホール(東京都)
・10月25日(日)清塚信也コンサート in 西光寺(宮城県)
・10月30日(金)5週連続コンサート「週刊!清塚信也」(第5回)@王子ホール(東京都)
・11月26日(木)清塚信也ピアノコンサート@熊本県立劇場コンサートホール
・12月17日(木)住友生命第24th全国縦断チャリティコンサート(仙台公演)@仙台 電力ホール
・1月8日(金)住友生命第24th全国縦断チャリティコンサート(高松公演)@アルファあなぶきホール(大ホール)

・清塚信也/コンサート&講座の最新詳細情報はこちら
・清塚信也『HAL』CM曲絶賛ON AIR中!
・ウェブサイト『音遊人(みゅーじん)』インタビュー掲載!
・清塚信也「ビデオ試聴」「ボーナス・トラックつきデジタル限定版」
・清塚信也イメージビデオ〜ショパン:舟歌」ビデオ試聴 <<http://www.barks.jp/watch/?id=1000020579>>
 『熱情〜Appassionata〜with ボーナス・トラック デジタル限定版』の購入・試聴! <<http://mysound.jp/music/detail/tYTFH/>>

◎ NEWS 清塚信也CD 好評発売中!http://www.ravenjam.com/kiyozuka/discography/

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2009.07.01

なくなった石

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彼はいつも自分の中に世界を創っていて、
そこには他の人物は誰も立ち入れさせたくなかった。
それは彼が生きてゆく上でとても大切な事だった。
しかし、彼は普通の20歳の男だったし、
それなりに社会に属していて決してその社会のルールを破ろうなどという考えはなかった。
つまり彼は「社会には迷惑もかけないし、何も意見しないから、
どうか自分の世界に立ち入らないでくれ…」と言いたかったのだ。

その日、彼はいつも通り家を出て駅に向かうところだった。
しかし、家から10メートルくらい歩いたところで一歩も歩けなくなった。
彼は持っていた鞄を落とし、歩き途中の中途半端な姿勢で止まってしまった。
右脚は少しかかとが上がっていて、重心も前のめりになっている。
しかし、ぴくりとも動かずに停止してしまった。電信柱の影と同じように。
それから10分ほどそこに停止してから彼は声とはいえない声で「石がない」と言った。
彼の力ない言葉は音にもならず、発したそばからすぐ空気の中に蒸発してしまった。

彼の家の前には大きな石があった。
大きなといっても、人間の頭くらいの大きさだ。
それが何故か道路の中に埋め込まれてあった。
道路は舗装されていて、しばしば車も通るようなものだったので、
よく車がその石を踏んでしまって騒ぎになっていた。
一度はバイク便でスピードを出していたライダーがそれを踏んで転倒し、大けがを負った。
そんな石がどうしてそこに埋め込まれているのか彼には想像もしなかったが、
その石は彼がこの家に15年間住む上で大きな心の支えとなっていた。
その石が、どうしてか、今朝からなくなってしまっている。
石のあった跡には雑草が少しだけはえていて、
舗装された道路とのギャップから突然発生した小宇宙かのように違和感を醸し出している。

それから10年が経ち、まだあの空虚な穴は塞がっていない。
かつて石が君臨していた空虚な小宇宙的穴。
彼が失踪してからもう10年が経とうとしていた。
あの石がなくなって少ししてから、彼はいなくなってしまった。
彼が生きているのかどうか、それを知るよしは無い。
誰にもわからない。

でも、僕は解る。
彼はもう二度と帰ってこないし、
石はもう二度とあそこの穴に帰ってくることはないのだと。

2009.05.28

妄想と現実のあいだ

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【時間よ止まれ、君は美しい…ファウストはそう言ってメフィストフェーレスに魂を取られそうになった】


「更に、昨夜、日本海に向けて1発ミサイルを発射しました」
普段TVを殆ど観ない僕は、昼間コーヒーを飲みながらたまたま点けたニュースでその事実を知った。

昨夜僕は全くと言って良いほど寝付けなかった。
なぜだか、深い森の奥に漂う靄のような、妖しい雲が掛かった月が気になって仕方なかったのだ。
月は今にも風に煽られて折れそうなくらい鋭利だった。
「こんなに細い鋭い月って今まで見たことあっただろうか」
2階の窓から永遠に靄の掛かった細長い月を眺め続け、ついには眠れなくなってしまった。
眠れないので、その日の昼間の事を思い出してみた。
ピアノを6時間練習すると、腕も重くなってきたし、まだお昼過ぎだったので車を走らせた。
ナビも消して、携帯も置いて、どうでも良い格好で、家を飛び出した。
僕は自由だ。僕は自由だ。そう言い聞かせて。
気がつくと八王子まで来ていた。
八王子を過ぎると、自分でも何をやりたくてこんな事をしているのか解らなくなって来た。
その時、何故だか笑いが止まらなかった。
全く知らない街に辿り着いた。
オープンカフェがあったので、近くの駐車場に車を停めて、外側の席についた。
僕はそれから5時間近くずっと通行人を見ていた。
色んな人がいるな。
一番印象に残っているのは、幾何学模様のような柄のシャツを着たお婆さんだった。
お婆さんその人よりは、そのシャツがそのお婆さんに渡る経緯について特に考えた。
誰かがくれたのだろうか?
自分で買ったのだろうか?
シャツは黒地に銀色のラインで模様が付けられている。
そういうシャツを好んで手に取るのだろうか?
お婆さんはあるいは数学的な美学を心の奥底に秘めているのかもしれない。
誰も知らない深海に沈む海賊船のように。
お婆さんは真っ直ぐ歩く先を見据えて歩いていた。
他には何も見えない…といったように。
そういう姿勢を見ると、僕はここにいないんじゃないか…という錯覚に陥ってくる。
僕はいないんじゃないか。本当は、誰かの影なんじゃないか。
知らない土地でカフェに入ってぼーっとすると、孤独と背中合わせだからか、観察するものがすごくリアルに感じる。
その結果、自分がリアルじゃなく感じる。
……そういう感覚って僕は大好きだ。

2階の窓から永遠に細長い月を見続けてもう朝方になる。
月と僕との間には何層かになった妖しい雲がとても速い速度で流れている。
まるで空と海が逆転してしまったかのようにも見える。
不思議な光景だった。
美しくもあり、妖しくもあり、そして、何とも言えない不安や緊張にも似た感覚もあった。
僕がこうしている間にも、ミサイルは日本海にむけてぐんぐんとスピードを上げている。
僕らは何も知らない。
僕らはとても無力だ。
この細長い月を合図に、影の悪魔たちがそっと動き出して悪さをしていても、僕たちは何も知らない。
とても無力なんだ。

「更に、昨夜、日本海に向けて1発ミサイルを発射しました」
それがリアルな事にはどうしても思えなかった。

2009.05.18

桐朋の学生オケとグリーグを

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僕は十代の頃、大人はなんでみんな同じ様な事を言うのだろうと不思議に思っていた。
あまりに同じ様な事をあたかも裏で口合わせをしているかのように言うものだから、
「大人って想像力が無いんだなぁ」と思っていた。
もう少し想像力のある魅力的な事を言ってくれたら、子供は目を輝かせて大人の言うことをきくのになぁと。

そういう大人の「ありきたり語録」の中でも、
「子供時代なんてあっという間に終わってしまいます」というのが僕は一番嫌いだった。
「あっという間におわってしまうので、今を大切にしましょう」
大人だって昔は子供だったのでしょう、子供の頃、今を大切にしましょうと大人から言われて、
「よし!これからは大人になるまでの子供時代を大切にするぞ!」と意識する子供っているのだろうか。

少なくとも僕はそういう大人の「知ったかぶり」が嫌いだった。
大人に子供の何がわかるか。
子供だって子供なりに真剣に一生懸命生きている。
何もやってなくても、何らかの不安や恐怖を抱えているんだ。
でも、その緊張の表現がまだわからないし、その不安や恐怖の実態さえ見えていない。
だから、子供はどうやって不安がったらいいかが分からない時があるんだ。
それを知らずに、「しっかり生きましょう」「大切に生きましょう」なんて無神経にも程がある。
と、思っていました。僕は。

 ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  

先日、僕の母校である桐朋学園の学生オーケストラ「ベルデオーケストラ」と共演しました。
久しぶりに桐朋にリハーサルしに行ったし、桐朋内のピアノを触りました。
「あれ、こんなに天井低かったっけな」「こんなに静かな学校だったっけかな」とか色々と思いました。
懐かしい警備員のおっちゃんとか先生とかにすれ違うと、なんだかおきまりの反応しか出来なかったです。
「あらまー、先生お元気ですかぁーー、いつまでもお若くて〜」
懐かしいというものは無条件で人を優しくしてしまう効果がありますね。

僕も歳をとったなぁと思いながら4階のリハーサル室へ。
部屋にはオケのメンバーがもうそろっていて、熱気がすごかったです。
若いエネルギーが充満していた。
初めはお互い探りながらといった感じで、緊張気味だったかね。
曲は「グリーグ」。
リストやショパンの影響を多大に受け、
ロマンティックで超絶技巧、それに民族的(ノルウェーの作曲家です)なピアノ協奏曲。
冒頭ティンパニのクレッシェンドからいきなりピアノのカデンツァ。
当時はすごく斬新でかっこよかったアイディアなんだろうなあと思います。
リハーサルの堅さをほぐすために、僕は思いきり最高速度で弾いてオケをヒートアップさせようと試みました。
さすがに桐朋の学生オケで、やればやるほど吸収してくれる。
これが若さですね。
素直で真っ直ぐだから、もっともっと!と言うと本当にやりすぎくらいなテンポでやってくれたりする。
そういう荒さみたいなのが僕は大好きです。
若い人には若い演奏があって何が悪い。
僕は先生に「君にはこの曲はまだ早いよ」と一蹴された事が多々ありましたが、
僕が先生なら喜んで理解出来そうもない曲をやらせてみるなぁ。
青かったら青かったなりの演奏があっていいじゃないか。
このグリーグという作曲家は割に若々しい曲を作るので、学生オケにはぴったりのように感じました。
むしろ僕がちょっとご老体みたいだったかな?

「本番編」につづく…